オトススメAtoC






Art Garfunkel / Songs From A Paret To A Child

■Art Garfunkelがわが息子Jamesのために作ったアルバムSongs From A Paret To A Child。このようなタイプの音は大体が「どうだい、うちの子可愛いだろー」的な嫌らしさが見え隠れするのだが、さすがアーティはエンターティンメントのプロに徹していて、聞くもの誰にでも楽しめるアルバムを作ってくれている。
■一曲目のWho's Gonna Shoe Your Pretty Little Feetの素朴なトラディショナルな雰囲気にやられてしまうこのアルバム。優しく力強いアートの歌声はすでに「天使の歌声」とは程遠いが、そんな自分の力量に相応しい歌をセレクトしていて、老いを全然感じさせない。若い頃のような張り上げる壮大なバラードが少ない分、軟らかいメロディやアレンジが目立ち、とても聴きやすい内容になっている。
■選曲もCAT STEVENSの「MORNING HAS BROKEN」やLOVIN' SPOONFULの「DAYDREAM」、ダンボで有名な「BABY MINE」、BEATLESの「I WILL」など。それらの名曲を新緑のような温かく爽やかな音の涼風に仕上げている。たった一曲だけGood Luck Charmで8歳くらいなのか?のJamesくんがメインボーカルを取っているが、これがまた上手い。やはり血筋なのか、それとも父親による相当なボイトレがあったのか、普通に子供番組でかかりそうな曲になっている。

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Bonnie Raitt / Takin' My Time

■僕にとってコーヒーは煙草と共に最も重要な消費物である。一日5杯以上必ず口にする(ちなみに煙草は一箱だ)。だから気に入った喫茶店を見つけるととても満足した気分になる。そんな時間に最も合う音楽、それはBoonie RaittのTakin' My Timeかも知れない。普通、常識的に考えるとサザンロック系ってのはウィスキーが似合う。そしてカフェに似合うのは橋本徹が選曲するようなサバービアな音楽、ボサノバだったりフレンチポップだったりするんだろう。でもカフェを知的でおしゃれな空間ではなく、時間軸から遊離した、内向的な空間と感じてしまう自分にとってはスティールギターやフェンダーベースの音が妙に心地良い。
■89年にアルコール依存から復活し、現在もクオリティの高いアメリカンミュージックとスティールギターを聴かせてくれるボニー、このアルバムは73年発表の彼女の3枚目。ミュージカルスターの娘として小さい頃から音楽に接していた彼女は大学を中退後、音楽の道へ。学生時代からブルースを方向性としていたボニー、Howlin' Wolfらと親交を深めていたらしい。そして70年に二十歳でデビュー、このアルバムを発表した時は、まだ23歳だった。
■しかし、弱冠23歳の娘のアルバムとは思えないほど老成されたこの3rdアルバム、参加アーティストもスゴイ。プロデュースも手がけているのはオーリアンズのJohn Hall、アメリカ音楽の集大成と言われるアルバムを作り上げたVan Dyke Parksや、今でもアメリカの土臭い音楽には参加ミュージシャンとして必ず名を連ねているJim Keltner、そしてLittle FeatのLowell Georgeなど、いまだにアメリカ音楽史に名を残す個性派ミュージシャンたちを一つにまとめてる。これが二十歳そこそこの小娘の仕業だとしたら脱帽以外の何物でもない。
■このアルバムやVan Morrison、Little Featなどを聴いていると現在の20代の若者が作る音楽が、なんて底の浅いものだろうと思えてくる。逆にいえば、若いうちからこれほど完成&老練された音楽を作っていたからこそ、早くに破綻を来たし、酒や薬や宗教等に陥ってしまったのかもしれない。


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Bob Malone / Malone Alone

■昨年末に遅ればせながら出会ったピアノの弾き語りアルバム。Bob Maloneはニュージャージーの出身だが、クレッシェントシティの雰囲気をたたえるローリングピアノの名手だ。
■ 軽く転がる鍵盤さばきに、だみ声の味のあるボーカル。曲もほぼオリジナルだが、グッド・オールド・アメリカをほうふつとさせるチューンが並ぶ。
■ 2003年発売のこのアルバムは5枚目であり、それまでの音楽生活を総括するようなベスト的なライブアルバムである。Dr.John、Leon Russell、Randy Newman、Tuts Washingtonなどなどそういう音が好きな御仁にはぴったりな音だろう。ピアノをつらつらと聴きながらほろ酔いするにはぴったりな音だ。
■ ボズ・スキャッグス、ネヴィル・ブラザーズなどの前座をこなしているらしいのでブレイクを待望されているが、なかなか今一歩のところでうまくいかないBobをこれからも見守って行きたいと思う。

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Browning Bryant / Browning Bryant

■こいつの名はBrowning Bryant、1957年生まれだからこのアルバムを出した当時は16歳、もちろん僕をうならせたのがこのハイスクールボーイの才能だというわけではない。プロデューサーはアラン・トゥーサン、バックバンドはアーサー・ネビル、レオ・ノセンティチェリ、ジョージ・ポーターらミーターズ陣(残念ながらジガブーは参加していない、ドラムはスモーキー・ジョンソン氏で彼はプロフェッサー・ロングヘアの「Big Chief」でドラムを叩いていた人として名を知られている)。
■ 当時はザ・バンドに始まりロバート・パーマー、キング・ビスキット・ボーイ、フランキー・ミラー、果てはポール・マッカートニーまで猫も杓子もニューオリンズに馳せ参じ、アラン・トゥーサンの力を借りようとした時代だった。そしてその多くは傑作として今に至るまでレコ屋の店頭に並んでいる。
■ しかしこのジャニーズ系の74年の名作は大した話題になる事なく今年日本でリイシューされるまで30年間忘れられていた、なんとも残念なことだ。今回初めて聞いて、私はすぐさま虜になってしまった。ニューオリンズファンクの熱く脂ぎった泥臭いFUNKのリズム隊にジャズセンスも持つR&Bの立役者アランのピアノが乗っかるいつものシー・セイント・サウンドがまるでとろけるような甘いSSWになってしまっているからだ。ちょっと古い言葉を使えば「木漏れ日フォーク」あるいはドノバン風? 
■ ブロウニングのソフトで優しい声はとことん熱いニューオリンズファンクを究極のメロウポップ≒AORにしてしまったのだ。でもそれが違和感なく、むしろ気持ち良いという部分に音の錬金術師アラン・トゥーサンの技能が輝いている。11曲中8曲がトゥーサン、3曲がブロウニングの作曲によるものだが、若干16歳の才能も決して悪くない。バラード中心だが、異質なほどクオリティが低いわけでもなくむしろ最終曲Homeなどは締めくくるに相応しい力を充分に持っている。
■ と書いたところで改めてトゥーサン自身のアルバムを思い出してみる…Life, Love And Faith、Southern Nights、Connected…洗練されたピアノの音色、力の抜けた歌声、緊張感あるのに優しいリズムやメロディ、もしかしてメロウポップがトゥーサンの本当の持ち味なのかもしれない。FUNKというカテゴリーがなければ、黒人じゃなければ、彼はポップ職人だったのかも、このアルバムはそんな妄想を髣髴とさせる名盤だ。だれも想定し得なかった最高の出会いがここにある。
■ もしよければ、あなたもやわらかくて温かくて優しいこの一枚で癒されて欲しい。


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Al Green / Precious Lord/I'll Rise Again

■82年のPrecious Lordと83年I'll Rise Againの2on1だ。確か両方ともグラミーのゴスペル部門を受賞した作品。
■ ゴスペルなんて野暮ったくて流行おくれの音のような偏見を持ちがちなのだが、アルの歌声は伸びやかで美しい。あのスタンダードチューンPrecious Lordを実に自分流に解釈して(崇高というよりは)親しみやすくセクシーに歌いこなしている。アレンジは随所にシンセが効いていて80年代らしいチープさがあるが、それも彼がゴスペルをヒットチャートの最前線となんら変わらない位置で作っていた証拠だろう。
■ 激しくはない、でもしみじみと隙間に入ってくる名作、宗教の世界に行っちゃったことがこんなに良い効果をあたえたアーティストはなかなか少ない。わかってるけど、やはり名作だね。


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bonobos / あ、うん

■ボノボのアルバムはメジャーで3枚出ているが、どれも素晴らしい。蔡 忠浩(サイチュンホ)くんのハイトーンで力みのない歌声が既に気持ちいいのに、バックの音も透明感があって清清しい。若葉の馨りを彷彿とさせる。とても感じのいい人たちなんだろうなという想像が浮かぶ。
■結構エレクトリカルFUNKのような音作りなはずなのに、アコギを前面に出しているところや、メロ自体の問題なのだろうかとっても浮遊感があって癒される。ロック、ポップス、ブラジリアン、ダブ、レゲエ、FUNK、ジャズ、ハワイアン、、色々な要素が見え隠れするが、それら雑多なジャンルをひとつにまとめているのはやはり蔡くんのボーカルだ。初期のピチカートファイブだったりラウンドテーブルだったり渋谷系だったりまったりダブだったり好きな人には絶対いけると思う、というかそういう人はほぼ知っているはず。かわいいくせに心を凛とさせてくれる一枚。

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Cornell Dupree / Teasin'

■こちらはStuff以前の74年のコーネルの初リーダー作。Teeは8曲中6曲参加。ホーンアレンジも手がけている。
■一言でいって黒いアルバム。デュプリー弾きまくりのギターもそうだが、全体のグルーヴ感がまさにドス黒い。King Curtisの下で育ったプレーヤーとしての本領を遺憾なく発揮している。しかしここでのTeeの役割はあのゴスペル調のピアノは聞けない、フェンダー等のキーボード中心(ピアノパートは別の人)に重くなりそうなリズムに、あの独特のフワフワ感でアクセントをつけている役割だ。
■2年後にStuffで再演するHow Long Will It Lastがとてもスリリング。

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Cornell Dupree & Who It Is / Coast To Coast

■コーネル88年のアルバム。メンバーはTeeとクリス・パーカー、元Blood,Sweat & TearsやBlues Brothers Bandのルー・マリーニ(SAX)、今後しばらくコーネルとともに活動をするフランク・カニーノ(B)てなかんじのセッションアルバム的な意味合い。
■ギター抱えて荒野にたたずむ黒眼鏡・黒スーツのおっさんジャケはまさしくブルーズマンのアルバム。唄い泣くギターもちょっと溜めを作るサクソフォンもブルーズそのものなんだけど、Teeのピアノがその雰囲気に都会的な意味合いをつけていることで個性が出ているのかも。
■ファンキーでブルージーなのに妙に落ち着く一枚。



Ace / Five-A-Side

■数あるパブロックバンドの中で唯一全米トップ3に輝く曲「How Long」を収録するエースの1stアルバム、74年。元Action〜Mighty Babyのメンバーに元Bees Make Honey、元Warm Dustのメンバーが集って結成。Paul CarrackのソウルフルなヴォーカルとThe Band系アーシーサウンドに西海岸の影響を強くブレンドしたUK版Doobieサウンドが特徴だ。
■深味のあるヴォーカルと、共作を含めほとんどがキャラックの手になる伸びやかでメロディアスなコンポーズがこのバンドの売りなのだが、キャラックのワンマンバンドと思ってしまうと大きなミスになる。というのも、ともすると上手いがゆえに甘くなりすぎる彼のヴォーカルとメロディを支えているのがウエストコーストを理想とする辛味の利いたタイトなサウンドだからだ。それら両方の味が生きていて初めてエースの音楽は完成している。それはAce脱退後のRoxy Music、ソロ、Squeeze、Mike and the Mechanicsそしてまたソロという遍歴の中でキャラックサウンドがどのように変わっていったかを見ればお分かりになるだろう。
■ソウルフルでポップでそしてアーシーな、一風変わったUKロックバンド、Aceのデビューアルバム、ぜひ聞いてみて欲しい。

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あがた森魚・大瀧詠一 / 僕は天使ぢゃないよ

■あがたと大瀧師匠、ティンパンアレィによるOST、映画はあがたの初監督・主演作品で原作は林静一のコミック「赤色エレジー」 より。テーマ曲の赤色エレジーは誰でも聴いたことがあるほど有名曲だが、あの世界観そのものの貧乏話で売れない漫画家志望の一郎と倖子の四畳半恋愛物語だ。10年近く前に中野の映画館で見た記憶があるが、緑魔子の裏暗さから漂う妖艶さと、突然岸壁で演奏を始めるはちみつぱいの面々のシュールさが記憶に残っている程度。基本的にはアーティストやミュージシャンたちによる学芸会の延長のような作品だと捕らえればそれなりにたのしい。
■音のほうはあがたの泣き節と師匠のタイトなビートの奇妙な二律背反が楽しいオムニバスだ。♪男と女の間には〜と♪決まってびんぼーが同じ空間に流れるのだからシュールレアリスティックだ。しかし、タイトル曲である「僕は天使〜」が天まで突き抜けるほど明るく楽しげなのがあがたらしくなくて興味深い。というかこの曲が断然良い、はちみつぱいの演奏もとても明るく後日のムーンライダースを思わせる。一曲だけでも買う価値がある。
■ちなみに映画のほうは主な出演者を並べておきましょう。あなたの琴線に触れる出演者もいるはず・・・あがた森魚・横尾忠則・大瀧詠一・長井勝一・緑魔子・桃井かおり・下田逸郎・山本コウタロー・泉谷しげる・鈴木慶一・三上寛・友部正人・岡本喜八・井上堯之・中川五郎・・・まさに学芸会。

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Artie Traum、Chris Shaw、Tom Aksterns / Big Trout Radio

■魚釣りの歌だけを集めたアルバムがこのBig Trout Radio。SSWの巨匠Artie Traum、Chris Shaw、Tom Aksternsの3人がある物語を作り、その物語にあわせた曲を14曲入れている。
■その物語というのは、10ワットの出力しかない山奥のラジオ局「大きな虹鱒ラジオ」は、オーナー兼DJの趣味で魚釣りに関する曲しか放送しないというもの。
■そんな音楽と釣り以外に興味のない世捨て人のアルバムなのだが、このアルバム自体が世捨て人というか、飄々としていて大人の遊びだなぁと感じられる。トラディショナルフォークの名人たちが集まって酒を片手にあーだこーだとでっち上げる様が眼に見えるよう。こんな粋なオヤジたちになりたいものです。 (オトシャベリより改稿)

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Creedence Clearwater Revival / Chronicle

■CCRで一枚というのは選びがたいものです。彼らの全てが南部であり、マディであり、Bayouなんですから。。。彼らの場合はどの曲のどの音がセカンドラインの影響で、なんてことはなく全てがNOであり、全てがケイジャンであり、全てがスワンプ、ビートルズに対抗できる唯一のアメリカ人と呼ばれただけあり、全てが南部の血でできている。
■しかし、大きな謎が残る、なぜカリフォルニア出身の彼らの血の中にニューオリンズが生きているのだろうか?

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The Band / Cahoots

■アメリカ音楽の再興者ザ・バンドがさらにルーツミュージックへの回帰を深めた4作目。NOだったりカントリーだったりテックスメックスだったりスワンプだったりするわけだがそのすべてに多くの愛情と尊敬を注ぎ、自分たちの血肉にしていっている。
■そこで分かるのはジャンルという線引きでは語れない土着の音の素晴らしさ、そしてそこに根付いている人々の生活の美しさであろう。
■アラントゥーサンとのコラボ、ヴァン・モリソンとのデュエット等聴き所盛り沢山過ぎる。

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Blind Blake / All The Published Sides

■ブラインド・ブレイクはその名の通り盲目のブルースマン、主にシカゴやデトロイトでラグタイムギターを聞かせていたらしい。1895〜1933という短い人生だが、ブルース人名・用語辞典によると「26〜32年に80曲あまりを録音」したという。
■さて、この5枚組CDボックス、1926〜32までの110曲入っているからには彼の録音は全て網羅されているのではないだろうか? 雑音の激しいものもかなりあるものの、その爪弾くようなギターを堪能できる。女性を中心に数人のボーカリストが名を連ねているが、ブレイク本人のものが一番味わいがあっていい。
■ジャケの写真は彼の唯一の肖像。

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Andwella / World's End + People's People

■69年にアルバムLove And PoetryでデビューしたサイケポップバンドAndwella's Dreamが改名して、ジャズやフォーク、英国風スワンプなどを中心に作ったアルバム。70年・71年の2作品の2on1。独特の英国風メロディとDavid(現Dave) Lewisのソウルフルなヴォーカルが叙情的な田園風景にいざなう。初期ヴァンモリソンと"木漏れ日フォーク"の中間的な雰囲気といえば分かりやすいか?
■World's〜の印象的な鍵盤の音と大胆なブラスの使い方は英国そのものを感じる。かなりマッカートニー系イギリスPOPの言説で語れそうだが、そこがまたいかにも霧の都の音らしくていい。ビートルズからジェネシスに移行していくUKポップの過渡期が分かる作品。
■そして英国スワンプの名盤として名高いPeople's〜の美しさは湿った土の匂いを彷彿とさせる。牧歌的なやわらかいヴォーカルなのにヴァン・モリソンのような求道精神も感じさせる。力強く重みのあるDavid Lewisの歌に孤高ゆえの優しさを感じる。
■ちなみにソロカムバック作の評価も高いDaveは2004年2月に初来日を果たしたばかり。



Armando Trovaioli / Sesso Matto(OST)

■sesso mattoは73年に公開されたディーノ・リーヂ監督の映画。日本未公開。内容はB級のお色気コメディです
■すいませんジャケ買いでした。アレは22歳の時、今はなきCISCO・ALTA店で目に入ってきたアナログ。そのカラフルな色使いとさえない男たちの顔。そしてど真ん中に君臨するラウラ・アントネッリちゃん。なんの音楽かもわからないでレジに向いました。そして聴いた! カッコイイ! 1曲目からファンキーなスキャット。また喘ぎ声入り(笑)なのが嵌っていて尚カッコイイでのすよ。わかりやすく言うと11PMのオープニング「シャバダバシャバダバ〜」がもっとダンサブルになった感じかな。
■基本的にメロウなスキャット中心のトロヴァヨーリにしては珍しくダンサブル。ライナーノーツの中で橋本徹氏が「73年は16ビートが確立された年だから、その影響を受けたのではないか」的なことをおっしゃっております。
■まぁ実はこの曲以外はトロヴァヨーリらしいまった〜りした昼下がりの紅茶のような曲が続きます。それも充分イケてるんだけど、だったら「新黄金の七人7×7」のアルバムのほうが出来が良いかも。オープニング聴きたさに、レコード持ってるのにCDまで買いました。レコードはジャケット鑑賞用に(笑)。
■セッソマットはタイトル曲だけで沢山のサントラアルバムの中からぬきんでていると思う。映画自体が見れないのが残念。(オトシャベリより改稿)

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Armando Trovaioli / Italian Style Comedies: Film Music

■「黄金の七人」「女性上位時代」等のB級イタリアンコメディ映画を支え続けた作曲家アルモンド・トロヴァヨーリの作品集。
■上品でのんびりしているくせにどこか悪戯とエッチ心が抜けない彼の音楽は渋谷の若きサバービアンたちの心をがっちりつかんでしまった。
■聞きどころは、なんといっても#1のセッソマット。同名映画のテーマ曲だが、女性のあえぎ声のような歌い方に、なつかしの「11PM」テーマ曲(シャバダバシャバダバ)のようなスキャットモノを好きな人もおしゃれモノ好きな人も夢中になること間違いなし。ただしあくまでも全編にただようB級らしさを楽しむ方が正しい聞き方だろう。
■メロウで刺激的なトロヴァヨーリイズムを堪能あれ(笑)。

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Cherrelle / High Priority

■85年発表の、Cherrelleの2ndアルバム。プロデュースは1stから引き続き元TimesのJimmy Jam & Terry Lewis。このアルバムがブラコンチャートで大人気を呼び、Janet Jacksonのプロデュースをすることになったんじゃなかったかな?
■そしてこのアルバム以降シェリールはブラコンやダンスに欠かせない女王になるはずだったけど、Anita Bakerや前述のJanet、Whitneyらがヒットチャートを独占し、結局ブラコンチャートより大きく足を踏み出すことはなかった。皮肉なことに後から出てきた従姉妹のPebblesがPOPチャートで踊りだすことに。
■このアルバム、実に80年代ブラコンらしい秀逸なアルバムなのだ。基本的には21世紀になっても何も変わらないJam&Lewisサウンドなのだが、シェリールのボーカルは時にはウイスパーで耳元を刺激し、時にはアレサのような腰の入り方で聴くものを引っ張っていく。あまり激しいビートの曲はなくミディアムテンポのダンスチューンが続くがそれでも聴くものを飽きさせないのは歌唱力とメロディアスさだろう。一曲一曲がよく練られており、その上でアルバム全体の統一感が出ている。
■ちょっとしたショウ仕立てのオープニング(A/B面とも)から、ダンサブルでリズミカルなナンバーがスタートし、そしてちょっとメロウな曲で休ませてくれるのかと思えば、メロディの美しさで聴きこまされ、再び盛り上げていくあざとさ。Jam&Lewisの手腕にうならされる。実に80年代の都会的な雰囲気を演出してくれるアルバムだ。
■特に好きなのは、B面一曲目のSaturday Love。デビューしたてのAlexander O'nealとデュエットをしているが、当時の都会のロマンスの雰囲気を想像させたものだ。(オトシャベリより改稿)

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Bootsy Collins / Blasters of the Universe

■Bootsy Collinsの94年のアルバムだ。この前作「What's Bootsy Doin?」がビル・ラズウェルを起用して、肉体的FUNKと機械のサイバースペース的融合を表現していたものだったが、このアルバムは全体が肉体、汗だらだらのアドレナリン大放出大会になっている。前作と今作の間にはMalcom MacLarenとのコラボレーションやDee-Liteへの参加等の他人との共作が多かった。
■ビルとのアルバム製作も共作とみると12年も自分らしい作品を作っていなかったことになる。そのフラストレーションが一気に吹き出たんだろうか、それとも日本を含めてのワールドツアーが効を奏したのだろうか、Rubber Bandとの演奏も昔以上に息があっている。クレジットも79年以来のバンド名義、それも再生を意味してかBootsy's New Rubber Bandとなってること自体でも本人の意気込みが分かろうもの。
■1曲目からベースがビンビンはねてるBootsyの名前通りブチブチちぎるようなベースが腰を一撃、そしてそこにとってもチープな女性ヴォイスが絡み、Fred Wesley率いるホーニーホーンズが被さってくる・・・ステキ! BootsyのソロというよりはJB'Sのアルバムを聴いているような始まり方だ。グループでアルバムを作っている感じが充分伝わる。
■そしてこのアルバム最大のオススメは8曲目のWide Track。ホーン中心のインストなんだけど、なんというかAverage White Bandのような感じといったら怒られるかな? グルーヴ感がとても気持ちいい曲なのだ。P-FUNKが苦手な人でも、FUNK自体苦手でもこの曲は気持ちよくなれるはず。
■また、このアルバムは、クレジット通りNew Rubber BandのアルバムらしくBootsyが前面に出ていない。イニシアティヴを取ってるくせに前面にでていないことで、スーパースターBootsy Collinsではなくアーティスト/クリエーターとしてのWilliam Collinsの良さが上手く出ているアルバムだ。うーんこなれているゾ! 「我が名はブーツィ」って言ってた頃より等身大に音楽を楽しんでる感じだ。いいぞ!
■でも2枚目のリサイクルインスト集はいただけないなぁ。「インストも出したい!」というアーティストの採算度外視のわがままに対する媒体側の苦肉の策の2枚組。1枚目だけで全然満足できるのに・・・それだけ自信作だったってことか?(オトシャベリより改稿)

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Bootsy Collins /Keepin' Dah Funk "ALIVE"

■実はBootsyのライブってのは面白くない。3回見ているがどれも中だるみするのだ。客をステージに上げたり、自分が客席に乱入したり、そんなコーナー的な部分が多い分、音楽を堪能する気持ちをそがれてしまう。しかしライヴアルバムには勿論そんな部分はない。徹頭徹尾、FUNKの洪水だ。
■そしてこの94年のツアーを収めたアルバムにはOne Nation...を筆頭にP-Funk、Flash Light、Cosmic Slopとパーラ/ファンカ時代の曲がぎっしり、まさにブーツィー版Earth Tourなのだ。
■そんな意図からか演奏も超ノリノリで2枚組いっぱいにたるみのない筋肉質FUNKが詰まっている。

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Bootsy Collins / What's Bootsy Goin'?

■初めてFUNKの凄さを知ったアルバム。世評的にはサイバー(機械)とFUNK(肉体)の融合がテーマ。しかしそんな小難しいことを言う前にまずは踊れ! こんなに楽しいPOPアルバムなんだから。外部の人間の参加に頼ったところが大きいのかP-FUNKらしい冗長な部分がなく、一曲一曲がとてもキャッチーにまとまっている。
■こんな重い粘着性のリズムをシンセで作り出したことも驚きだが、その上を飛び跳ねているギターやベースの躍動感はすばらしきもの。そしてクリントン含め数々のボーカルとホーニーホーンズが(今まで以上の)美しいメロディを紡ぎ出している。この時点でBootsyは力で押すFUNKではなく緻密な旋律が織りなすPOPのマエストロの一人になったのだと思う。

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Circe Link / More Songs! from Circe Link

■ジャネクラ、イングリード・ルシア、YesYesBoysのデル・レイなどなど、オールドタイミーなキャバレージャズの歌姫が続々登場している。こちらのサーシ・リンクもその一人か。
■アコギにウッドベース、ドラム、マンドリン、フィドル、ピアノを加えたシンプルなスタイルにセクシーで妖しげなブロンドの美女。なんとも50年代のポスターにでもなりそうな構図だけど音はどうかと言えば、これがまたオールドスタイルな魅力を充分に持っている。
■オールドスタイルではあるが、実はジャネクラに象徴されるオールドタイムフリークだったりマリア・マルダーのようなルーツ探求音楽というわけではない。このアルバムはブルーズにカントリーポップ、オールドジャズのテイストは充分なのだが、自分の作った曲(全曲彼女の作曲)に相応しいアレンジをしたらオールドタイムなムードになりました、という処だろう。そこには古い時代へのこだわりも憧憬も見えはしない。そして多分あの時代にこの曲たちは生まれなかったであろう。あくまで現代の人が作った現代の曲だ。そこがジャネクラ的オールドジャズ少女やマリア・マルダー娘たちとの大きな違いだ。
■そうはいっても聴く側にとってはなんとも気持ちのいいノスタルジックミュージックである。「たまたま閃いたから音楽を始めちゃった」というパンクバンドのコーラスしかやったことのないLA娘とは思えない。フェアグランド・アトラクションの雰囲気も見え隠れする。
■そんな過去のイメージや嗜好にとらわれることなく自由奔放に作ったサーシ・リンク嬢の「全く新しいオールドミュージック」、とくとご賞味くださいませ♪



あがた森魚 / 日本少年

■恥ずかしながら、不勉強なものであがた氏に関しては、これまでは「赤色エレジー」や「バンドネオンの豹」くらいしか耳にしたことがなくタンゴのリズムに泣き節のフォークシンガーとしか認識していなかった。今回聞いたのは矢野顕子ちゃんのジャパニーズガールがこの日本少年(ジパングボーイ)の姉妹作だということを知ったからだ。
■このアルバムすごいね。一人の日本の少年が世界一周音楽の旅をするアルバムなのだが、日本少年・ジャパニーズガールというネーミングがよ〜くわかりました。
■あがた氏の大正ロマンチシズムと細野晴臣(ティンパンアレー)のアメリカ土着系音楽そしてムーンライダースのヨーロピアンサウンドが絡み合ってまさに90分間世界一周。すべての気持ちいい音楽集大成ってかんじ。
■とりあえず、歌声というよりは泣き声としか思えない胸に染み入るあがた氏の歌声が、こんなに心地よく聞こえるようになるとは、それだけでもめっけもんなアルバムである。次は日本少年2000系を聴いてみるとしよう。(オトシャベリより改稿)

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相曽晴日 / トワイライトの風

■いささか毛色が違う世界のアルバムだ。相曽晴日という人は(狩人や中島みゆきを輩出した)YAMAHAのポプコンからデビューした女性フォークシンガーソングライターだ。
■82年に発表されたデビューアルバム「トワイライトの風」は(ラジオ番組コッキーポップなどの努力により)そこそこに話題になったもののほとんど省みられずにショービジネスからは消えていった。今は江古田のライブハウスを中心に月イチ位で弾き語りライブをしているという。
■しかしこのアルバムだけは是非聴いてもらいたい。美しいピアノの響きと透明感のあるボーカル、そして"学生時代"というくすぐったいイメージを実感してほしい。多分多くの人の心の中に残っている"片思い"とか"カフェでの待ち合わせ"とか"講義のあとの帰り道"とかの思い出に重なってくるだろう。美しくも儚い思い出たち。それらにちょっとばかり浸りたい日にはぴったりなアルバムだ。なおこのアルバムはHP「廃盤復刻計画」でのリクエスト運動により再発された。

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クレイジーケンバンド / グランツーリズモ

■イエーイ、なんだかわからないけどとにかく騒ごうぜー。もう歳はオジサンだけどさー、心はヤングだぜぇぇぇ。次の日曜日は父親参観日だけどよー、シャコタンでヨコハマヨコスカぶっとばそーぜー。助手席のナオンは二人の子持ち〜、お受験が迫ってても深夜の首都高バトルだぜぇ、あぁなんか疲れたなぁ、この辺でガスト入ろうぜ、フリードリンクだから好きなもん飲みなよ
■僕らが丸刈りでカバンをつぶしていたころ、この人たちはリーゼントで龍の刺繍の長ランだったんだろうな。僕らがDCブランドで身を固めてボディコン女を探していたころ、この人たちはハマの倉庫でライブしてたんだろうな。僕らがリストラと貯金の利率にびくびくしている頃、漆黒のグラサンに純白のスーツで身を固めたこの人たちは、唯一無二の大人の不良ソング「GT」を届けてくれた。そのアルバムがこの「グランツーリズモ」だ。
■夏の行楽、ドライブのお供にこのアルバムは欠かせない。これさえあれば浜崎橋ジャンクションの渋滞も、横羽線の追加料金も、涼しげに通り過ぎるETC車もなんのその、港のヨーコヨコハマヨコスカまでひとっ飛びだー。元祖ネオ昭和歌謡、元クールスのケンさんが送る必殺軽快ナンバーで、アナタの心は思い出の三浦半島にトリップできる。。。はず。
■お盆休みだけが僕らの夏じゃないぜええええ(え?

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Babs Gonzales / 1947-1949

■バブズ・ゴンザレスをはじめて聞いたとき、吾妻光良さんの原点がこれなんだと思いました。バブバブ、ウバッブバー、ダビダビダー、そう!スキャットとはこの人のためにあるようなものです。軽妙なジャズ/ジャイヴのリズムに合わせてほぼスキャットする彼の歌は何もかも忘れて楽しんでしまえる逸品です。
■Babsは1919年ニューアーク生まれ。変わった履歴の持ち主で、一時俳優のエロール・フリンの運転手をしていたこともあるそうで、80年に亡くなってます。上記の吾妻氏が広めるまでは日本ではかなりキワモノ扱いだったようですが、スキャットということ以外は実はかなり小粋でスイートなバップです。
■このアルバムはちょっぴり甘く、そしてひたすら楽しい彼の全盛期の録音を24作集めたもの。ドゥンダバダバディディドゥドゥドゥダバダドゥラドゥラドゥバーウディウディウッパー.....ステキな世界です!!

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吾妻光良&The Swinging Boppers / Squeezin' and Blowin'

■日本唯一無二のジャンピンブルースマン吾妻氏の2002年の新譜は最盛期のジャイヴ音楽をそのまま日本に持ってきたような素晴らしいもの。下品で滑稽でスインギンでアヤシい。
■楽しくても哀しくても怒っていてもとりあえず踊るしかないリズムと、騒がしくて悲しくてロマンチックでこくのあるだみ声ボーカルがあなたの心をGHQ統制下の闇酒場へ連れて行ってくれる。
■「東京のダイナワシントン」と吾妻がデュエットするムーディなバラードで気分は昭和30年代の食い倒れデートへ。とにかく無粋でパチモンでバッチグーだ(笑)。

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Chevalier Brothers / Live And Still Jumping

■こちらのライブは82年に英国で結成されたジャイヴユニット唯一のアルバム。聴きモノはスピード感溢れるコーラスの掛け合い、そしてそこにスリリングに絡んでいくギター、ヴァイヴにホーン。バシバシ火花が飛び散りそうなくらいジャムっているこのアルバムを懐古主義ということは出来ないだろう。
■すべてがチャキチャキに引き締まっており、旧来のジャイヴらしいダレた感じはない、そこがキャバレー音楽ではなくなった現代のジャイヴのベクトルを示している演奏といえる。CDはヴィニールで85年にリリースされたものに7曲追加されたもの。

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The Cats & The Fiddle / Killin' Jive 1939-1940

■Cats&Fiddleの1939-40年のブルーバードでの録音。テナーギター(5・6弦を外したギター)2本とティプレ(小型の複弦ギター)をシャカシャカと歯切れ良くかき鳴らしながらのコーラスは粋でおしゃれとしか言いようがない逸品。
■転調を繰り返しつつも、ゆる〜くそして時には激しくジャンプする4人のチームワークは脱帽するしかない。
■良く聞きこんでいけば、彼らがJIVEバンドではなく、JIVE形式を使ったコーラスグループであることに気づくかもしれない。彼らの姿勢がコーラスワークの妙を活かすための演奏なのだが、これはこれでとってもいいんだな。必聴

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Cab Calloway / Are You Hep To The Jive?

■いきなりブワっブワーとノリのいいリズムで始まるこのアルバムは映画「ブルースブラザーズ」でもおなじみのジャイヴの帝王キャブ・キャロウェイ、彼の現在最もコンパクトでわかり易い最良のアルバム('35-'45の編集盤)だ。
■スキャットを中心に愛嬌と滑稽さを振りまき、コットンクラブのアンクルサム(白人に愛される低俗で滑稽な黒人)役を演じぬいたキャブの往年の哀しくも楽しい名作が22曲、どの曲もどこかで聴いたことがあるはずだ。聴いていると、自分もあの白いタキシードに幅広帽子で踊りだしたくなる。ハーリハーリハーリハーヘーリヘーリヘーリホー  

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Bo-Keys / The Royal Sessions

■20003年リリースのデビューアルバム。名前から分かるようにメンフィスSTAXモノ。それも強力なるメンバーによって結成されたスーパーグループである。
■Al Greenのプロデューサーで知られるWillie MitchellのRoyal Studiosで録音されたこのアルバム、まずオルガンが元Bar-KeysのRonnie Williams、ギターが元Isaac HayesのグループのCharles Skip Pitts、ドラマーのWillie HallはBar-KaysやBlues Brothersで活躍したベテラン、そしてバンドリーダーのScott Bomarは90年代にImpalaというグループで活躍していた。ここまで読むと、サザンソウルのハウスバンドプレーヤーたちの同窓会バンドか?と思われるのだが 、ここに2本のホーンとパーカッションの若手が絡んでくる。
■半分くらいオリジナルですが、これがなんともいいメンフィス臭を醸し出している。一番のお気に入りはどす黒いグルーヴにまたこれも真っ黒なボイスが絡む#2。最高にファンキーなナンバーだ。カバーではDave Bailey、JBやJimmy Smith等あり、どれも非常にこなれてて往年のStaxサウンドを彷彿とさせるが、ボーカルやパーカッション等の今風なアレンジが21世紀のバンドであるということを再認識させてくれる。ダンスチューンとゆったりしたグルーヴチューンが絶妙な配置で並んでおり、その辺りも憎いところだ。

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Booker T. & The MG's / The Very Best Of Booker T. & The MG's

■スタックス・レコードのハウスバンドとして60年代のR&Bシーンを支えてきたブッカーT&MG'sの演奏はウイルソン・ピケット、サム&デイヴ、オーティス・レディング、アルバート・キングら様々なビッグネームのアルバムで聴けるが、彼ら自身のアルバムも音の宝箱だ。
■R&Bクラシックとして名高いGreen OnionsやTime Is Tight、Hang 'em Highなどは音楽ファンならずとも一度は耳にしたことがあるだろうし、Groovin'やサイモン&ガーファンクルのMrs. Robinsonが完璧なインストR&Bとしてよみがえっているのを聴くのは大切な経験だろう。
■自ら楽器を手にする人にとってこのアルバムはネタの宝庫であるとともに、大切な歴史の金字塔だ。このソリッドでオリエンテッドなR&Bの焦燥感をインストゥルメンタル表現できているアーティストは彼ら以前にも以後にも聞いた事がない。それほど貴重で美しいグルーヴを体験しないのは大切なものに気づかないで人生を送るのと同じことだ。ここを通らなければブラックミュージックは理解できないだろう。聴け、踊れ、そして学ぶべし。

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The Bar-Kays / Soul Fingers

■MG'sの代替バンドとして60年代後半から80年代後半まで活躍したメンフィスソウルのインストゥルメンタルバンド、1967年発表のファーストアルバム。67年のオーティスレディングの飛行機事故の時、同乗していたメンバー4人(6人中)も亡くなったので、オリジナルメンバーとしては唯一のアルバムとなる。
■60年代後期の雰囲気が色濃いジャケットと大ヒットしたタイトル曲はご存知の方も多いだろう。メンフィスソウルとかインストゥルメンタルR&Bなんていうよりも熱く(モッズ風に)混沌としたファンクアルバムであるというほうがしっくり来る。ペットとサックスの2本のホーンとギターが交差するキャッチーなメロディとオルガン・ドラム・ベースが作るネットリとしたリズム、灼熱と砂埃と泥と汗、そんなものが似合う怒級ファンクなのに、なぜかとってもチープ感がある。チープでファンキーでモッズ、それがこのアルバムのいいところかな。
■バラードやミディアムタイプの曲はとってもアーシィ、オーティスの「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」の音を思ってくれればわかりやすいだろう。オルガンのゴスペル〜ソウルっぽい味わいが五臓六腑に染み渡る。大好き。

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Billy Joel / An Innocent Man

■ビリージョエルなんていまさら、って感じだけど、やはり良いものは良い。
■名盤400選にも書いたが、名盤には2タイプあって、新しさを提示したものと本当に楽しめるアルバム。ビリージョエルのこのアルバムにはまるで新しさはないけど、本当に綿密に楽しむことだけを求めて作り上げた作品である。
■ブロードウェイ、ハリウッド、ディズニーランド、エンターテインメント先進国アメリカのエキスを十二分に詰め込んだアルバムだと思う。
■音楽に関しては、いつもムーブメントはイギリスが見つけてきて、最後に楽しんでるのはアメリカ人なんだよなぁ。楽しめます。

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Bob Dorough / Beginning To See The Light

■しょっぱなのピアノの軽快な調べだけでもう楽しくなっちゃう。Randy NewmanのSimon Smith and・・・ではじまるボブ・ドロウの76年のライブアルバムである。
■最初はタップダンスの伴奏だったというだけに、そのリズム感は驚愕的、ピアノとベースだけのジャジーなライブなのに後に残る感想はポップなのだ。
■カウントベイシー楽団やサッチモらともステージを分けたことのあるボブ、かなり旧い年代の人と思われるが、昔のグッドオールドミュージックの雰囲気と現代的なしゃれたポップセンスとを持ち合わせた彼の音は新譜だと思っても十分すぎるほど新しく楽しい。



Brinsley Schwarz / Nervous on the Road

■The Bandがたまらなく好きで真似しているうちに歴史に残ったバンド・ブレンズリーシュウォルツの72年の4th。ほとんど売れなかったわりには、当時かなり評判が良かったらしい。全てが人懐っこい愛らしいメロディと、音数が少なく分かりやすいくせに妙にポップなサウンドで占められている。
■名曲というほどではないが、愛するべき曲Happy Doing What We're DoingやちょっぴりジャズっぽくかっこつけたFeel a Little Funky、ちょっぴり哀愁を感じさせつつも楽天的なWhy,Why,Why,Why,Why、思わず口づさんでしまうR&B風I Like It Like Thatなどもゴキゲン。
■しかしそれ以上に気づくのがHome in My HandやNervous on the Road、It's Been So Longなど、なんかマージービートを彷彿とさせないか? なんとなく初期のビートルズやストーンズなんかと並んで対バン張っててもよさそうな雰囲気だ。愛すべきPOPにあふれる隠れた(地味な?)名盤。


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Bees Make Honey / Back on Track

■Eggs Over Easyがツアーにでている間にタリーホのハウスバンドの地位を拝借して人気バンドの仲間入りを果たした彼ら、アイルランドはダブリンのショウバンド・サーキットで腕を磨き、ロンドンで一旗あげようと乗り込んできたようです。
■しかし、Louis Jourdanの名曲Caledoniaをオープニングに配したご機嫌な名盤アルバム一枚発表しただけで空中分解してしまう。今回の2CDアルバムは'72年からバンド解散の'75年までのスタジオテイク14曲と76年のライヴ録音をコンパイルしたもの。
■美しく真っ直ぐなカントリーロックが満載のアルバムだが、どんなアルバムだったかと聴かれてもいかんせん後に残らない。それほど個性の少ないバンドだったのだろうか。ライヴ録音でさえあまり熱くない、淡々と好きな曲を歌っているような感じがする。目立つ曲がカヴァー曲だということを考慮すると作曲能力の問題か?
■ライナーノーツに詳細なファミリートゥリーが記されているが、BeesとAce、Chilli Williらの歴史が一目で分かって興味深い。

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Chilli Willi & The Red Hot Peppers / I'll Be Home

■優しいスィンギーなビートと軽快なリズム、そして心地いいコーラスワーク、ルーツ系アメリカ音楽のアレンジ、そう書いてみるとパブロック版Dan Hicksのような感じだ。
■西海岸風カントリー自体はもちろん、スィングジャイヴ、ラグタイム、ブルーズ、ブギウギ、ロックンロールなど、さながらオールアバウトアメリカンミュージックの見本市の様相だ。
■Elvis CostelloのAttractionsのドラマーPete Thomasが在籍したとか、Nick LoweのバックバンドのPaul Rileyがいたとか、The ResidentsのサポートギタリストのPhil "Snakefinger" Lithmanが元Savoy Brown〜Mighty BabyのMartin Stoneと作ったUKカントリーバンドだとか、そういう周辺情報を中心に語られる Chilli Williサウンド。
■しかし彼らの2枚のアルバムのヴァージョン違いアレンジ違い、そして未発表ライヴを集めたこの驚異作を聴いていると、彼らが単なるカントリー系パブロックという範疇に括られるバンドだったわけではないことが分かる。
■思うにBrensley Schwardzのようなカントリーロックへのまっすぐな恋を表現するのではなく、チリウィリの場合は、アメリカのルーツロック全体のイギリスへの移入を模索していたのではないだろうか? ちょうどはっぴぃえんどが日本文化とロックの融合点を模索したように。
■このまま極めていたら多分彼らは新しいUKルーツ音楽を見出していたかもしれない。しかし、パブの酔っ払い労働者層はもっと過激に憂さの晴れる音を求めていた。そこが時代の哀しさかと。名曲ぞろいです。

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Astor Piazzolla / Tango:Zero Hour

■ピアソラは1921年ブエノスアイレス南のマルデルプラタで生まれ、92年にタンゴヌーボーの立役者として、数え切れないフォロワーとファンを生み出してこの世を去った、タンゴの作曲家及びバンドネオンの演奏者。そして彼の全盛期(定説)であった時期をちょっとすぎた96年にニューヨークで作られたのがこの名作「タンゴ・ゼロ・アワー」。
■ざわざわとした都会の騒音の中にシュプレヒコールが混ざり、それが加速されていく。そこにバンドネオンのヒネた短調の音色が切りこまれていく。つねに沈着冷静、しかしその中に納め切れないほどの狂気を秘めた旋律が刻まれている。
■焦燥感っていうか追いたてられる感じというかいても立ってもいられなくなる感じがする、ちょうど首都高を180キロで走らなきゃならないような死と隣り合わせの焦燥感。そしてとても緻密だ。緻密さが狂気めいてる。全7曲一秒も息をつけない。
■抑制されてはいるが確実に感情を吐露しているバンドネオンの音色に、敵意を持つようにぶつかっていくバイオリン。。。何を言っても、聴く以外に解りえないだろう。(オトシャベリより改稿)

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カルメンマキ&OZ / The Best Of Carmen Maki & Oz

■圧倒的な精密さと大音量、そして表現力が豊穣で奥底に突き刺さってくる歌声とリフ。カルメンマキを初めて聞いたとき、ボクは30を過ぎてなお、全てを忘れてロックのすごさに驚嘆させられた。
■完璧な演奏力に裏打ちされたブルースやハードロックのメロディが、マキの絶叫しても揺らがない歌唱力とシンメトリーを描き、その断末魔のような霊的ともいえる表現をより効果的なものにしている。まさにを日本人としてのロックへの回答、解釈である。
■マキも素晴らしいが春日氏を始めとするOZのメンバーの演奏に対する執念のような魂を見せらつけれる。

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Bob Marley and The Wailers / Legend

■レゲエの創始者マーリィさんのベストアルバム。死と隣り合わせなほど抑圧された社会政治の中で物理的な貧困・過労等の苦しみから民衆を一時でも夢を見させることが出来たマーリィさんはある意味ガンジーと似たような位置にあったのかもしれない。
■愛をもって苦しみのゲットーから人々を解放する、そんな理想は単なる夢想の中にしかないのかもしれないが、彼の音を聞いていると間違いなく「救われた」気持ちになる。それほど慈愛に溢れた魂の歌声に今でも触れ合うことが出来る僕らはテクノロジーの進化に感謝すべきかもしれない。

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Bobby Charles / Bobby Charles

■55年に「黒人レーベル初の白人アーティスト」として世に出たボビー、ニューオリンズを中心に歌手/コンポーザーとして活躍するも、60年代後半ドラッグに手を出したことにより不遇の時期を送る。起死回生作というには余りある名盤が作られたのは、厭世観より山村だったウッドストックに隠遁しようとした彼がたまたまニールヤングのバックメンバーと出会ったことがきっかけだったらしい。
■ザ・バンドやジェフ・マルダー、エイモス・ギャレットらのウッドストック派の若者らと作り上げた71年のこの作品はとってもリラックスしている。元大物の復活作というにはあまりにさりげない。「世に問う」という気負いを全く感じさせないからだ。それは彼自身の素朴でまっすぐに音楽を愛する人間性と、同じく音楽自体への愛情溢れるザ・バンドらが本当にいい音を作ることを目指した結果であろう。
■謳い上げるのではなく語りかけるようなボビーの歌声には真摯さと愛情が感じられる。全てを吹っ切ってただ自分が信じる音楽だけを紡いでいく彼と、現在の人気に溺れず、彼をリスペクトしサポートしていく若き音楽家たちの真心だけがこもったアルバムである。

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Central Park Sheiks / Honeysuckle Rose

■76年発表の最初で最後のアルバム。ブルーグラスが新しい潮流を見せ始めた時代にすっごく普通ですっごく優雅なカントリースイングを届けてくれた。
■バンド名通り都会的でしゃれた音なので決して「優しい」「温もり」を期待するとちょっと肩透かしか。「手を差し伸べる」優しさの代わりに「ほっといてくれる」気楽な肌触りの音だ。通勤電車のシートで独りうとうとした時のような誰にもかかわらない/誰をも気にしなくていい心地よさを感じさせる。
■アクースティックスイングをBGMとして漂わせる場合、この邪魔をしないさりげなさは都会生活者にはとてもいい。

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Asylum Street Spankers / Hot Lunch

■アコースティックギター、ウクレレ、バンジョー、フィドル、ハーモニカにクラリネット。ゆったりスイングするリズムの中に昔のアメリカがある。まさにグッドオールドディズ、まるで場末の踊り子のようなちょっと猥雑感ある女性ボーカルやいかにも田舎のジェントルマンらしいコーラス、開拓時代の西部のバーでの一夜に紛れ込んだ気分にさせる。
■冒険を終えた後のリラックスした時間がゆっくり流れていく感じ。仕事を離れてちょっと優しくなれるひと時を演出するにはふさわしいアルバムだ。
■アサイラムのアルバムはすべて心地よい。アメリカの良心を感じさせる

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Art Garfunkel / Fate for Breakfast

■ガーファンクルの78年の4枚目。元相棒ポール・サイモンに触発されたのかStuffのメンツをバックに採用し、ゴスペル風の優しくも力強いサウンドを聞かせてくれている。そのようなことも含め非常にやさしく穏やかで、本当に「眠って」しまいそうなアルバムである。現在のソフトロック再評価の中でも秀逸の作品だ。
■そして前作の流れからまた1歩踏み出し、エレクトリックサウンドを大胆に取り入れている。Lee Ritenour、Steve Gadd、Rob Mounsey、Stephen Bishopらとのコラボレーションにより、クロスオーバーな魅力を引き出している。いい意味でフュージョンボーカルアルバムに近い作品だ。
■発表当時は「これじゃS&Gじゃない!」とか「明日にかける橋のようなきれいなバラードがないじゃないか」などと酷評だったようだが、そんなものを期待しない現代に聴けば非常に上質なAORアルバムだといえよう。(オトシャベリより改稿)

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Art Garfunkel / Watermark

■「とても心地よくって思わず眠ってしまった」と湯川れい子さんがライナーノーツで告白しているこのアルバムはArt Garfunkelの77年の3rd。
■Watermarkはほとんどの曲がJimmy Webbのもので、「アーサー、ジム"恋はフェニックス"ウェッブを歌う」という体裁のアルバムである。僕がアーサーの数ある名曲の中でももっとも優れた曲だと思っている「Crying In My Sleep」をはじめ、どの曲も穏やかで、優しい佳曲に満ちている。
■そして、ジム作以外では、Sam Cookeのスタンダードナンバー「 (What A) Wonderful World 」が秀逸だ。アートとポール・サイモン、ジェイムス・ティラーの絡みが非常に心地よく、ジャケットに現れているコンセプトである「平穏」「清清しさ」を非常によく形作っている。数多の「 (What A) Wonderful World 」カバーの中では、このバージョンがピカイチなのではないかと僕自身は思っている。(オトシャベリより改稿)

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