オトススメPtoR






Prefab Sprout / Jordan:The Comeback

■バンドの中心はPaddy McAloonとプロデューサーのThomas Dolby。優しくって温かい幻想的な音作りはたぶんにDolbyの力なんだろうな。はじめて知ったのは88年のアルバムFrom Langley Park to Memphis。若くて、いかにも古き良きR&Rに憧れているバンドって感じのジャケットだったんだけど、音を聞いたらGreen Gartside(笑)。たまたまScritti PolittiのProvisionが出た当時ではまっていたところもあり即GETだった。彼らの最大の良さはバラードの美しさ。切なくて耽美的でしかし締まりのあるバラードはScrittiPolittiよりも良く出来てるんじゃないかな? とても気に入ったものだ。
■ そして満を持して90年に登場したのがこのアルバムJordan:The Comeback。Jason AnkenyがAll Music Comの批評の中で「役者のいないサウンドトラック」だと言っているが、19曲に及ぶ音の洪水、そしてサンバが出て来たり、ボレロが出て来たりする万華鏡のような雰囲気、あたかも旧約聖書の逸話を彷彿とさせる仰々しい言葉の数々(歌詞の意味はわからんが)は、なにか壮大なストーリーを感じさせる。
■ しかし、言葉がわからない我々には、そんなことよりも音が与える印象の方が大切だ。基本的にはLangley Parkからほとんど変わらない音作り。相変わらずもこもこと幻想的なPOPと切なく可憐なバラードが巧みに混在している。発表から11年経った今考えると、「相変わらず」というよりは集大成だったのではないだろうか?とも思えてくる。84年にSwoonでデビューしてからの6年間のThomas Dolbyとのスタジオワークの集大成。事実この後の唯一のアルバムAndromeda Heights(97発表)にはDolbyは参加していない。メロディメーカーMcAloonと鬼才Dolbyというコラボレーションの完成品としてこのアルバムを考えてみると、まさに美しく完成されているのではないだろうか。
■ Dolbyのバラードはアレンジ等の構成がとてもエキセントリックで美しいがメロディと歌がイマイチだった。そこにMcAloonのメロディと歌を加えた事で、互いに補強しあってこのアルバムが完成したのだとしたらそれはとても素晴らしい事だ。とりあえずとても優しくって愛らしくって美しいアルバムである事にはかわりない。ぼくの中でもPrefabはこのアルバムで満足だ。完成作だと思う。

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Paul Simon / Still Crazy After All These Years

■Paul Simonは僕が洋楽の中で最初に好きになったアーティストでした。ラジオでポールのStill Crazy After All These Years「時の流れに」を聴いた時、当時フォーク好きで、とても歌詞を大切にしていた自分の中で、歌の意味がわからなくても感情に訴えることが出来る音楽を知りました。
■ このアルバムは彼の中で一番の成功だとおもう。ラルフ・マクドナルドやスタッフのメンツが非常にいいセッションしてるし、ガーファンクルだけじゃなくて、フィービー・スノウ、ゴードン・エドワード、デイビッド・サンボン、ボブ・ジェイムズ、パティ・オースティン等、今じゃ考えられないくらい豪華なミュージシャンがそろってる。プロデューサーがビリー・ジョエル育てたフィル・ラモーンだから当たり前といえば当たり前だが。グラミー取るだけはありますなぁ。ぼくはこのアルバムからStuffやゴスペル等が好きになり、どんどん耳が肥えていきました(笑)。だからぼくの中の全ての基本ですね。
■ニューヨークのミュージシャンたちが参加したとてもクオリティの高いセッションアルバムってかんじかな。泣けるし、楽しくなるし、時代を超えて残ってるアルバムだと思う。これこそ名作!って推せるアルバムです。

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Paul Simon / One Trick Pony

■Teeの最高のパートナーといえばGaddだが、彼をもっとも活かした人といえばPaul Simonだろう。SimonとTee(とGadd)は75年以来ずっと同じ音を作り続け、同じライブを経験している。TeeもGaddもSimonのスケジュールにプライオリティをおいて活動していたという。
■そんなコラボが最も堪能できるのがこの79年のアルバム。本来はポール主演の映画のOST。映画は大失敗だったがアルバムは実にいい作品に仕上がっている。
■Simonの自信なさ気なボーカルはTeeのフェンダーの美しさと相性ぴったりだし、掛け合いでPaulと絡むTeeのボーカルのファンキーといったら!

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Ralph MacDonald / Counterpoint

■何故この人がStuffのメンバーじゃなかったのだろうというも思わせる男、パーカッショニストのラルフマクドナルドだ。
■彼の79年の3枚目がこれ。全6曲中4曲が歌モノ、また、自身のルーツでありカリプソをディスコアレンジにする等、相当メインストリームを意識した作りになっている(この翌年、G.Washington Jr.に永遠の名曲Just The Two Of Usを書くことになる)。
■Bob James同様ミュージシャンとしてよりはプロデューサー/ライティングとして名を高めてきた人だが自分のアルバムはやはり手堅い、いい作りをしている。ここでのティーはほぼリズム隊に徹している。

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Phoebe Snow / Never Letting Go

■ブラックシンガーソングライターの歌姫というかPhil Ramoneの秘蔵っ子というか、実にしっとりした音の似合うフィービーの77年のアルバムです。タイトル曲はStephen Bishopの大ヒット。
■Teeの出演は2曲だけ、Ken AscherとBob Jamesの3人のキーボードが堪能できる贅沢なアルバムです。しかしどれをとっても力強くかつ柔らかいフィービーの歌声にはぴったりと当てはまる作りになっており、まさに適材適所なんでしょう。
■乾いた風味のオープニング曲Love Makes a Woman、Paul SimonのカバーでNYのR&BらしいSomething So Right、そしてNever Letting Go等、聴き処満載!

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Richard Tee / Strokin'

■実はTeeのソロアルバムって五枚しかないのである。クレジットとして確認できるだけでも30年近いキャリアを持ち、参加したアルバムの数は数えたことがないという彼、しかしソロワークとなるとStuffとして名を上げた78年のStrokin'から亡くなる前年の92年に発売されたReal Timeまでたった五枚しかないのは音楽史上の不運としか言いようがないだろう。
■まずはStrokin'。Bob Jamesのプロデュースでの初リーダ作品(78年)。Brecker Brothers、Tom Scott、Eric Gale、そしてSteve Gaddが強力にバックアップ。基本的にはStuffの路線のTee中心の部分をクローズアップしたような内容なんだけど、そこはやはりBob Jamesのプロデュース。Stuffの黒汁っぽい部分を抑えて、より都会的にしています。まさにマンハッタンサウンドという感じ。タイトル曲でのMichael Breckerのサックスソロも映えまくっています。
■やはり最大の聴きどころはTake The "A"trainだろう。たかだか5分弱の演奏だし、Gaddのドラムとの二人だけのプレイなのに、凡百の"A"trainが比較にならないほどの存在感と重量感を放っている。ソロ演奏からガッドが絡んでくる瞬間の興奮はナニモノにも代えがたい時間だ。ラストにテーマが復演されるのだが、まだ終わらないで!と叫んでしまいそうになる。

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Richard Tee / Natural Ingredients

■2作目は80年発表のNatural Ingredients。前作がティーショットのティ−でこちらが紅茶のティーとおやじギャグのジャケが続きます。基本的には前作と大差のない顔ぶれ。違うことといえばボーカル曲がかなりのウエイトをしめていることかな。
■Stuffの項でも言ったけどボーカルが増えると自然とSOULっぽさが増してくる。自らのボーカルと女性コーラスが流行りのダンスソングっぽい1、ハーモニカとボーカルがブルースっぽさを醸し出す3、甘いバラードの4、与太ったサザンファンクっぽい6と、ボーカルソングはすべてSOUL/Danceっぽいアプローチがなされている。この風味はTeeの全てのアルバムで感じられるが、このアルバムではもっとも強力に出ているかも。JAZZ/クロスオーヴァーよりもSoul/MainStreamに傾斜した一枚だろう。ラストのメンデルスゾーン作曲Spinning Songは解釈という言葉を感じさせられずにはいられない。

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Richard Tee / The Bottom Line

■次の3作目は残念ながら日本のみの発売になってしまったもので85年発表のThe Bottom Line。セルフプロデュースで2作目のソウルボーカル路線をさらに推し進めてはいるものの、音的には1作目に近い都会っぽい音。Marcus Miller(B)John Tropea(G)Dave Weckl(Ds)という新メンバーが前作のようなブラック路線を、よりクロスオーバーな部分へ引き戻しているのが興味深い。Tee本人の歌もかなり上達(笑)。
■ここでの聴きどころは、"A"trainの再演よろしくGaddとの無敵のコンビネーションを見せ付けるRhapsody In Blueとその直前の冷たく幻想的で浮遊感のあるピアノリフで始まるNippon Lights。Nippon〜は日本独占販売を意識しての選曲なのだろうが、その物悲しいメロディがなんとも素晴らしい。このタイプの曲はTeeの他のアルバムでは見当たらないので是非聴いてもらいたい。そしてそのセンチメンタリズムから一転してアメリカの夜明けのようなRhapsody〜。成田を夜に旅立ち、早朝のNYに降り立つ。そして、次曲Miss-UnderstandingのWilliam Eatonのソウルフルなボーカルで一気にマンハッタンのど真ん中へ投げ込まれる。知らず知らずにそんなイメージが出来上がってしまうアルバムだ。
■日本人がかなり関わったのだろう。とても日本人にとってのNY、マンハッタン、クロスオーバー、スタッフ、というものたちのイメージらしい音になっている。それが決して媚びたり卑屈になったりしているのではなく、Teeの全てを完成させている結果になっている。日本とアメリカが育てたFusionという分野にやはり日本人は必要なフレーバーであることが実感させられる。名盤。

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Richard Tee / Inside You

■さて4作目、一番印象が薄いアルバムではあるが、とてもキメの細やかな作りをしているのがこのInside Youだ。
■89年の発表だが、RECORDED: 1983 thru 1989となっているところを見る限り、前作と同時期、あるいはその前から録りだめされていたワークを集めたのだろう。Stringsが復活しているほかは、クレジットにはあまり見るものもない、Patti Austinがコーラス参加していることくらいか?。ほぼオリジナル曲(2作をのぞいてすべて自作曲)で占められているのも目新しい。
■オープニングこそ、MillerのビンビンはねるBassにドキドキするが、基本イメージはジャケットの印象どおり、夜が似合う甘いバラードがほとんど。Tee自身の歌声もソウルボーカリストとして熟練の域に達してきている。それが逆に平凡なブラコンアルバムに陥る危険性を増している。アップビートな曲ではMillerのBassがとても刺激的だが、それ以外の曲は刺激というよりも癒しという言葉の似合いそうだ。シリーズだったGaddとの二人ジャムもない。完璧過ぎるほどのブラックアーバンナイト系作品。

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Richard Tee / Real Time

■しっとり落ち着いた曲で始まるのは5枚のうちでこのアルバムだけだろう。Real Timeという名のこのアルバムが彼の最後の作品となってしまった。前作で作曲欲求は十分に果たしたのだろうか?このアルバムでは3曲だけである。そしてスタンダードカバーも3曲。また(奥さんかな?)Eleana SteinbergことEleana Teeが2曲で作曲クレジットに入っている。ブレッカーBrosなどと活躍したボーカリストだ。
■全体的に静かなアルバムである、ボーカルも抑え気味、気の合う仲間たちの音も、以前のジャムセッション風ではなく、Teeのピアノを引き立たせることの腐心しているように思える。どんな気持ちでこのレコーディングをしたのだろうか? とりあえずFUNK的なビシビシ来る音を求められると無理かもしれない。すくなくともBassが派手好きなMarcus Millerではなく、サポートに徹するタイプのWill Leeであるから。ホーンの方もRonnie CuberやLew Soloffなどのきっちりとした真面目タイプのメンツがそろっている。
■やはり最大の注目点は1stアルバムの目玉だったTake The "A"trainの再演。もちろんGaddと二人での演奏だ。1stよりもかなり長い8分30秒のこの曲、彼の音楽人生の全てを詰め込むかのような迫力だ。解釈は前回とあまり変わらないが、一音一音がかなり重い。重機関車のような重厚で勢いのある音作り、まさにTrainだ。そして、上のほうで書いたが、テーマが繰り返されることで、尻切れトンボのように終わっていた前回の部分がきっちりと終結を見せている。すべての主題が完結しているのだ。人生をかけたのではなかろうかという一曲が終わると、あとは仲間たちが和気あいあいとしたフィナーレA Secret Placeに続き、別れの言葉のようなWith Out Youで幕を下ろす。聴くたびになんともいえない気分になるアルバムだ。

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Richard Tee / The Best Of Richard Tee

■さて、Teeの全てのアルバムにコメントを付してみたが、もうお分かりのように、5枚のアルバムは真ん中のBottom Lineを境目として、Soul/Disco寄りの前半とバラード/ブラコン寄りの後半がある。彼のピアノがとても活きているのはSoul路線であり、Soul路線を充実させるための道具だったボーカルが、後半のバラード路線のメインとなっているというのも興味深いものだ。
■使い古された言葉だが、ワンアンドオンリーのピアニスト、Teeの誰にも出せない音色はコンパクトディスクの中から、ボクの心をときめかせ、また癒してくれる、10代のときも今も、そしてこれからも。一枚一枚も大事だが、この素晴らしい演奏をまとめたベスト盤も手放せない。

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Randy Newman/ Songbook Vol.1

■Randy Newmanの新譜は全編セルフカバーだ。ピアノの弾き語りによる一人アルバム。プロデューサーのミッチェル・フレームと選曲したらしいが、ノンサッチレーベルに移っての新企画らしい。これも「安易」な感じがする。壮大なオーケストレーションやバンド演奏を排して自分の往年の名曲で食いつなぐ、そんな感じがしないでもない。
■しかし、それだけじゃなかった。このアルバムはランディの歌心を聞くアルバムだった。ランディ・ニューマンといえば風刺があまりにも辛辣で抗議運動まで起こったという風雲児。しかしそのクリティカルな歌の数々が時間を経るうちに、風刺の呪術が解け、歌声にも円熟味が増した。他者をあざ笑ったり警笛をならしていた歌が、その他者を愛しているがための言葉を漏らす歌に聞こえてきているから不思議だ。
■優しい、可能なかぎり優しい歌声が聞こえてくる。そこには諦念とか同情とかそういう負の優しさではなく、もっと大きな包容力で全世界を愛しているような優しさだ。こんな優しい歌を歌えるような年齢に彼が到達したということを見抜き、生かすことに成功したミッチェル・フレームの慧眼に乾杯したい。 (オトシャベリより改稿)

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Randy Newman / Ragtime

■古き良きアメリカをイメージするものが大好きです。映画でも音楽でも映像でも。ある人はボクの好きな音を評して「ディズニーランドでかかっている様な音楽」といいました。一部を除いては全くその通りなのかもしれません。ディズニーランドのBGMをボクはお金を払って集めているのかも。
■プロデューサーLenny Waronkerが目指したハリウッド的アメリカを具現化したバーバンクサウンド。そのの申し子Randy Newmanは親しみやすいGood Old Americaなサウンドと社会不安をもたらすほどのクリティカルな歌詞の二面性を以って70年代の音楽界を蹂躙しました。
■この映画サウンドトラックRagtimeはそんな彼の片面だけが強く出た作品でしょう。映画音楽という制限からクリティカルな面を発揮できないことで、もう一面である「古き良きアメリカの具現化」に相当力を入れたようです。美しい、本当に美しい、そしてゴージャスだけど儚げでちょっぴり切ない夢のような音世界。映画は見たことがありませんが、この作品は映像なしでも全く気にならないほど、私の耳を楽しませてくれました。こんな音で自分の映画を作れたら本当に幸せなんでしょうね。

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Robert Palmer/Sneakin Sally Through The Alley

■いきなりSailin' Shoesから始まる。熱く厚い音はパーマーとLowell Georgeのコラボレイトの賜物だ。「恋に溺れて」からしかボブを知らなかったボクにとってこれほどのショックはあまりない。
■Metersをバックに唄うロバートの水を得た魚のような自由奔放な歌声はとても気持ちがいい。唯一の問題は、やはり唄っているのが都会の白人だとわかってしまうところだろう。声に迫力がない。。。と書いて思った、あまりの気持ちよさに力が入らなかったのだろうか?

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Ry Cooder / Show Time

■音楽を楽しむってのはこういうことなのかもしれないと思わせるアルバム。ルーツミュージックの伝道師ライ・クーダー76年の記録録音である。
■ゆっくりまったりと過ぎていく時間の中に身を任せるような幸福感を感じさせてくれる演奏、フラーコ・ヒメネスのアコーディオンとライの生ギターを中心にゴスペルチックなコーラスや12弦ギターが色とりどりのアメリカ音楽を聴かせてくれる。
■まさに音楽の見本市のようなライヴであり、本当に土地に根付いている音楽というのが、なんて人をリラックスさせてくれるものなんだろうと再認識させられるライヴである。



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Paul Simon / There Goes Rhymin' Simon

■ぼくの基本となるアルバムの1枚。ポールがその帝国主義的搾取能力を存分に発揮し、セカンドライン、デキシー、R&B、ゴスペル等の黒人音楽をポップワールドに紹介したアルバム。しかし、その出来がいい! ポールのメロディや唄い方にとってもマッチしている。
■このアルバムを中2の時に聴かなければディープなSwamp世界には入らなかったであろう。ポールの内面に秘めた都会の優越と劣等感・競争・孤独・精密と黒人音楽の悲壮な歴史・慈愛・大らかさ・損得勘定のない感情が、くっきりと際立ち、音楽が進むにつれ、その垣根が取り払われてリラックスしていくようなそんな感覚に陥る。

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Randy Newman / Good Old Boys

■アメリカという大地は現在の一国主義などからは想像つかないくらい奥深い懐を持っている。様々な人種・宗教・文化・歴史を持った人々を包み込むその腕の柔らかさ・温かさは誰にであれ、一つの希望−アメリカンドリーム−を抱かせるのに充分だろう。そんな偉大なる大地への叙情と郷愁を(アメリカを愛する)豪華メンバーで編み上げたのがこの74年のアルバム「グッド・オールド・ボーイ」だ。
■ランディ・ニューマンといえば「セイル・アウェイ」や子供向け映画「Toy Story」の主題歌が有名な南部サウンドを現代に甦らせる名手として30年以上活躍している。その親しみやすいメロディと優しい歌声、しっくり馴染むピアノは日本でもファンが多い。しかし、彼の本質はそのシニカルで諧謔的な歌詞にあるという人もいるが、対訳をついぞ読んだことがないので、その辺はその専門家に任せたい。
■ライ・クーダー、イーグルス、ニック・デカロら南部サウンドをこよなく愛する仲間たちと作り上げたこのアルバムはどこを切ってもセンチメンタリズムである。さながらアメリカの学校の卒業式のBGM集のようだ(笑)。自分が生を受けた大地への愛情をおおらかにそして心を込めて唄いこんでいる。この音なら安心だ。本当に好きなもの/信じられるものを演奏している確信が旋律の端からにじみ出ている。
■現在入手可能な2枚組版はボーナスディスクに友人宅でのピアノ弾き語りライヴが収録されている。かなりの曲がかぶっているので、ニューマン流の壮大なオーケストレーションを楽しんだ後は、シンプルにメロディだけを楽しむのがいい。かなり小粋で楽しい。

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Ry Cooder / Jazz

■ルーツミュージックの旗手ライ・クーダーの'78の会心の作。JAZZというタイトルではあるが、そこには多くの日本人が想像するJAZZの気難しさや緊張感はまったくない。これは上記のJUMP FOR JOYと同様に、Good Old Americaのラグタイムやトラディショナルなどをライ独特センスで甦らせたものだ。
■ライといえば以前、Music Talkに書いたが、ルーツミュージックを用いることで自分の音楽性を広げるというような搾取型の進化はしない人だ。あくまでその音楽にどっぷりつかり、その音に合うように自分の音楽性を高めていく、「郷にいれば郷に従え」的な音楽作りをする人だ。
■ライの乾いてはいるものの繊細なボトルネックギターの響きが、ラグタイムのゆったりした流れの中で自然とスイングしていく。硬いはずの金属の弦の響きの中に自然と体温が感じられていく。そんな瞬間を楽しんでいると、自然と体も心もリラックスして、深い安心の中に入っていってしまう。絶品。

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Ronnie Lane & Slim Chance / Ronnie Lane's Slim Chance

■フェイセズ人気絶頂の中、グループを脱退し、自らのバンドを率いてソロ活動を展開したロニー、そのバンド名を冠したのがこの74年の2nd「Ronnie Lane's Slim Chance」だ。
■穏やかに演奏を楽しんでいる彼の笑顔(ジャケット参照)が見え隠れする一枚。フィドルの音色とギターが非常に枯れた心地よさを見せてくれる名作だ。肩の力を抜いて「あぁこれが俺のやりたかった音楽なんだよ」という満足を噛みしめるような充実感をこのアルバムは見せている。
■フィドル・マンドリン・アコーディオンというとまるでアメリカンカントリーの荒野のイメージだが、やはりそこは血が違うのだろう。ロニーの音はやはりイギリスの都会の音である。パブの音なのだ。どんなにアコースティックになってもライクーダーやクラプトンのような乾いた旋律ではなく、イングランドやスコットランドの伝統を引き継いだとても湿った音をしている。チャックベリーやドミノのカバーですら自分のモノにして実に楽しそうに歌うロニーだが、その湿った部分が平穏な楽しさを装うこのアルバムの中でどことなく、寂しさを感じさせるところなのかもしれない。
■また、自分の好きな、本当に納得いく音を作るために、地位も名声もかなぐり捨てたレインだが、そのことに対する一抹のほろ苦さもこのアルバムはかもし出しているのかもしれない。心に染み入る名盤。(オトシャベリより改稿)

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Ronnie Lane and slim chance / One For The Road

■ロニーレイン、ショウビジネスという世を儚んで、吟遊詩人のような道を選んでいるくせに、編み出す音楽はそんなヒットチャートに疲れた人々に心地いい温もりを感じさせる男。
■まるで、人里はなれて釣りにいそしんでいるくせに悩みを抱えた人々に、何らかの優しい/道を示すことの出来る言葉をかけるスナフキンのようなヤツだ。困ったとき、疲れたとき、悩んだとき、ロニーの声を聴くとなぜか安心できる、そしてなぜかウイスキーを呑みたくなる(笑)。このアルバムジャケットのように気の合う仲間と旅をすることが魅力に感じてくる。

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Peter Hammill / And Close As This

■元バンダーグラフジェネレーターのPeter Hammillのこのアルバムは雨にとっても似合う気がする。静寂の中からゆっくり浮き上がってくるようなピアノの音色ーー不安感をもたらすような独特の和音ーーがオープニングを飾る。ほとんど重く確実な音を刻むピアノと、切々と訴えることで誠実さをかもし出すピーターの低い歌声以外、レコード針の雑音しか聞こえない。まさにひたむきで哀しげな雨の夜のBGMだ。
■途中から入ってくる楽器も、MIDIで作ってはいるものの、決して雨音を邪魔するものではない。ピアノではどうしても表せない感情を伝える役割しかないのだろう。控えめに、そして効果的にメロディに絡んでくる。ピーターの激昂や感嘆をよりストレートに伝える仕事を着々とこなしている。
■このアルバムでピーターは何を言っているのであろう。ジャケットの瞳のようにとても哀しげな音色でできあがっているのに、とても落ちついた印象を与えられるアルバムだ。感情を押さえているというよりは、人生の物語を達観できてしまったからこその落ちつきのようだ。このアルバムの中でどんなに叫ぼうと、どんなに嘆こうと、決して癒されることがないのは理解できている。だからこそ開き直って嘆いて見せることで、次の段階に進もうとしているかのようだ。その歌声と不協和音のような音色からは人生の哀悼を感じこそすれど、そこに狂気は感じない。心に響くのは、全く逆に、落ちついた安堵感である。どうしようもない哀しみに打ち勝つことで生の目的を見つけてしまったのであろうか。
■何が哀しいのだ、ピーター? そして何を見つけたのか教えて欲しい。雨音に似た音を紡ぐピアノとボーカルに、生きることの哀しみを考えさせられてしまった。★★



Ronnie Lane / Anymore For Anymore

■モッズ文化の立役者であるスモールフェイシズや、ロッドスチュワートやロン・ウッドを生んだフェイシズを抜け、文字通り野に下ったロニー・レイン。ウェールズの片田舎で結成した名もないバンドのデビュー作がこのエニモア〜だ。彼が求めたものはヒットチャート受けするビートの強いサクセスストーリーではなく、野のせせらぎや小鳥の鳴き声、馬のいななきが似合う貧しくも美しいアメリカの原風景だった。
■生来のロンドンの都会っ子が憧憬によって作った擬似アメリカントラッド。全く根にはないルーツミュージックとしてこのアルバムを聴くと驚くことが多い。本人がどのように意図したかは分からないがアメリカントラッドでもなくイギリスの古典でもない。トラディショナルミュージックの顔をした新種の音楽なのだから。
■カントリーやフォークも、ディキシーやブルースですら全てアメリカのソレとは違う。たしかに渋い、ほろ苦くて、温かくて、荒野が似合う。しかしその荒野は湿度が高い、もしかしたら雪が積もっているかもしれない。道を横切るのは馬や水牛ではない、ロバや羊だろう。しかしこんな広い荒野はイギリスにはない。擬似音楽による擬似荒野の風景が完成しているのだ。ここにはバドワイザーもバーボンも不似合いだ。でもギネスでもウォッカでもないだろう。どちらかというとウイスキーをホットで割ったヤツか? これが解釈というもの。スインギン・ロンドンの申し子によるアメリカトラディショナルの新解釈、それがこのエニモア〜だ。
■ノスタルジックで悲しくてほろ苦い11曲の宝箱、ゆったりと温かくそして優しい時を過ごすならロニーのこのアルバムと温かくやさしい酒が一番だろう。ボクが出会ったのはソロデビュー作「How Come」のアコースティックVer.等のボーナストラックを含めた18曲の盤だったが、2003年4月に2枚組全32曲のスペシャルエディションが発売されたそうだ。。。。。欲しい。。。。。

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Robert Randolph The Family Band / Unclassified

■Robert Randolph The Family BandのUnclassified。2003年8月に発売したランドルフの2作目だ。前作がライヴ盤だったこともあり、ペダルスティールが延々と鳴っていたのに敬遠してしまったのだが、こっちはスタジオで一曲一曲きっちり作っているんでとっても聴きやすかった〜。もちろんご自慢のスティールは鳴りっ放しなんだけど、曲優先だから効果的に使われている。
■ランドルフというと「ゴスペル・コミュニティー出身のペダル・スティール奏者として、現在もっとも注目されるロバート・ランドルフの2作目にして初のスタジオ録音作品。ジョン・メデスキーとのゴスペル・ユニット、ワードでもフィーチャーされていた天を舞う素晴らしいランドルフのスティール・ギターと、ファミリー・バンドが生み出す強力なグルーヴが最高にダイナミックだ。アップテンポのファンクからソウル・ナンバーまで楽曲も実に幅広い。」(bounce.com)なのだが、黒いファンキーロックてな感じかな。とにかくイキがよくてノリノリですな。
■#1のスティールがヴォゥワ〜ンと鳴り出すところからゾクゾクッとさせられ、ギターが細かいリズムを刻みだし、ヴォーカルがガナり立てるところなんか全身に突き抜けるようだ。歌とスティールがキャッチボールのように曲を織り込んでいく。#2になるとよりファンク色が強くなるのだが、ファンクらしさというと普通はベースやキーに象徴されるんだけど、彼らのファンクらしさはギターに起因するものが色濃い。だからファンキーなブルーズなんだけどロックっぽさが強く印象に残る。#4なんかミディアムのブルーズ曲なのにヴォーカルとアコギでファンクっぽさを出してる。
■実はギターよりベースやキー中心の曲調のほうが好みなのだがこのアルバムは文句なくカッコイイ。ノリに乗ってる今が買いだ。全編走りまくりの47分、ラストのRun For Your Lifeまで熱すぎます。たぶん、ギターに触るとジュゥジュゥいうでしょうね。 (オトシャベリより改稿)

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Parliament / P-Funk Earth Tour

■語る必要もないほど有名なアルバム。しかし改めて聴いてみると彼らの演奏のすばらしさを再認識してしまった。オープニングのSaxとKeyの絡みなんてJAZZのインプロヴィゼーションのようだ。Funkというと勢いと力技のような感じが否めないが、すぐれた技量に裏打ちされたグルーヴだということを実感させられてしまう。
■77年のこのアルバムをはさんだ2年ほどがまさにP-Funkの最高潮の時期だったのだろう。演奏側も客もまさに狂っている、全てが一つのグルーヴになってFUNKを体現しているのが手に取るようにわかる。
■ライヴの一体感に戦慄を感じてしまったのはこの録音くらいだ。

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プア・サウンド・レコード / マタタビジャム

■宅録デュオPoor Sound Recordのセカンドアルバムmatatabi Jamは一曲一曲が恋文のようだ。各々の曲にサンプリングとして様々な楽曲を使用しているのだが、どの曲もサンプル素材曲に対しての愛情や敬意に溢れた使い方をしている。
■その曲に対する愛情を示すためにその曲をサンプリングするという使い方は良くあることだが、これほどまでに気を使って、いや気持ちを込めて使ってしまったらもはやサンプル(素材)ではなくオブジェ(対象)だ。オブジェに愛情を込めた歌というのは恋歌であり、これらは音楽に対するラブレターである。その愛情や敬意は歌詞や旋律、歌からも滲み出ている。的確な表現が見つからないが「滲み出ている」でのある。
■彼らの音楽は決して豪華だったりショッキングだったりノリノリだったりするわけではない。しかし音楽が好きな人だったら自然とニヤケてしまう音たちに溢れている。レノンや大瀧や細野やDr.Johnやトッドやコステロやその他多くの音楽愛好音楽家が、自らの若き日に影響を受けた音楽に対する深い敬意や愛情と同じ気持ちを、彼らは持っていると確信させられる。
■ミュージシャンには二つのタイプがあると思う。表現者である事を大切にしている人と、音楽愛好家だ。誰もがどちらでもあるはずだが、大切なのはその表現したい気持ちや愛情が誠実なものであるかどうかである。誠実な感情に裏打ちされた音楽は聴くものに安心と温もりを与えてくれる。(オトシャベリより改稿)

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ピラニアンズ / ピラニアンズ

■「ロバくん推薦!」と銘打たれた、日本屈指のピアニカ奏者・ピアニカ前田率いる自称「日本一、音の小さなバンド」。ピアニカの調べにアコギ・ウッドベース・そして今や有名人となったASA-CHANGのパーカス! まったりするしかないでしょ!! 
■しかもほとんど一発取りのファーストアルバムだからやる気満々、大村昆のようなメガネに汗をためながら縦横無尽に吹きまくるも、所詮ピアニカ、和みます。いや、マジで温泉気分、ぬっくいぬっくい、そんな感じに頬も緩みんじゃいます。

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The Ray Ellington Quartet / That's Nice!

■イギリス発のジャイヴバンド、ドラマー兼ボーカルのレイ・エリントンを中心とした4人組。イギリスにもジャイヴがあるんだ〜、ってくらいの興味本位で聴いてみたら、これがすこぶるヒップでかつクールないいかんじなのです。
■50年代後半の録音なだけに、モダンジャズの雰囲気も醸し出してきており、そこがジャイヴのクールさに拍車をかけている。
■アメリカのJIVEからにじみ出る滑稽さや愛嬌という(アンクルサムの音楽としての)キーワードは感じられないが、その分音楽自体を楽しむ方向に進んでいるのは黒人差別の薄いイギリスならではというところだろう。小粋な4ビートはおしゃれそのもの。

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Ron Levy's Wild Kingdom / 'Organ Colossus' The Very Best of

■FUNK FUNK FUNK、この一言に尽きる。BBKingやAlbert Kingのバックオルガニストだったロン・リーヴィ、彼の21世紀になってからのリーダーアルバム3枚からのコンピはまさに怒涛のアシッドファンクである。
■リーヴィは1951年生まれ、18歳でアルバート・キングのツアーに参加、その後BBキングに引き抜かれる。その後様々な場で演奏、プロデュース活動をこなし、90年代に入り自らのバンドWild Kingdomを結成する。そのB-3ハモンド使いはJimmy SmithよりタイトでSouliveより粘り気がある。Lonnie Smithよりダンサブルだ。Jam界の人気サックスプレーヤーKarl Densonの大ヒットアルバムDance Lesson #2でも演奏と作曲をしている。
■このベストアルバムはコロラドでの演奏を収めたLive(2001)、2003年初頭のGreen Eyed Soul、そしてKarl DensonやMelvin Sparksらが参加した最新作Finding My Way(2003)からセレクトされているが、なんと言ってもLiveからの音源が素晴らしい。臨場感というか自分の周りの空気すらが狂乱に身を任せているかのようだ。とにかくよい、絶品。
■HPはlevtron.com

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Robert Walter / There Goes the Neighborhood

■以前、The Greyboy AllstarsやソロでSAX吹きのKarl Densonの後ろでキーボードを弾いていたお兄ちゃんがこのロバート・ウォルター。注目され始めたのは2000年にRobert Walter's 20Th Congressというバンドを結成してジャムバンドとジャズとフュージョンの間のようなアルバムを出した時からだ。たしか、Stanton Mooreがゲスト参加してるということで注目を浴びたアルバムだった。僕も一応買ったが、ジャムシーンの一つの動き程度にしか思っていなかった。
■しかし、翌年に出たこのアルバムは激しかった。いきなりロバートの変態的なリフが飛び出したかと思えば、Harvey Masonのタイトなドラミング、そしてサイドからはPhil Upchurchのギターのカッティングが延々と聞こえる。ただただファンキーの一言。そして2曲目にはRed Hollowayのサックスがソロを取り、さらにゴージャスなファンク空間に。部屋の空気が70年代のR&Bで満たされる瞬間だ。
■約49分、ノンストップのリズム・アンド・ブルースが続く。これが悪いわけないだろう? どこにも「新しさ」や「緻密さ」「突飛さ」などはないが、ノリとかっこよさだけは何にも負けない49分、この音に酔うしかないだろう!

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Prefab Sprout / From Langley Park To Menphis

■鬼才トーマスドルビーのポップな感性をボーカルとビジュアルでメインストリートに近づける役割を担ったプリファブスプラウト。彼らのポップの完成形というのが「ラングレーパークからの挨拶状」だ。
■どれだけロックにしてもふわふわ甘いイメージが残るのはボーカルの優しさと、まるでゴドリー&クレームのギズモの様な神秘的なアレンジの故だろう。
■必聴はバラードnightingales、まるでしんしんと雪の降る街角で昔の恋人と再会。。。なんてロマンチックなシーンにぴったりな、切なくて甘くて温かいナンバーだ。冬にぴったりな優しい一枚。

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Rock Pile / Seconds Of Pleasure

■Rock Pileというのはパブロックの双璧であるDave EdmundsとNick Loweのユニット。もともとはDaveのツアーユニット名だったらしいけど、自らがプロデュースしたブレンズリーシュワルツのNickがソロワークをはじめてから、なんとなく二人のユニット的な意味合いに。そしてRock Pileの解散祝い(?)って感じで出たのがこのアルバム。
■ぼくはNick Loweは大好きだ。3回もライブに行ったほど好きである。NickってのはBay City Rollersの覆面作曲家をやっていたり、Dammedやコステロをデビューさせたり、デビュー前のヒューイ・ルイスの面倒を見てたりと、実は結構陰の大物なのだが、いかんせん本人のレコードは全然売れない。ライブもバックバンド連れて来れないほどである。
■で、このアルバム、まぁ日本で置きかえれば伊藤銀次と杉真理がコラボレートしたような感じのアルバムである。全編ぬるぬるな50年代風R&R、まったりとピクニックでもしながら聴いていたい感じだ。あぁ寝てしまった、気持ちいい暖かさだねぇって感じでね。ホンワカゆるゆる、楽しいなぁ(笑)。年寄ロックンローラーの同窓会?、あぁ昔は良かったなぁ、俺も髪の毛あったんだぜ、リーゼントでよ、モテたもんだったな、ナンシーはどうした? あぁ孫の入学式で来れない? 女も孫ができると連れないなぁ。。。。。。。。。
■しかし、このアルバムをつくった時、Daveは36歳、Loweにいたっては31歳である。なんでこんなにヒットや金を考えないアルバム作れるんだろうね、売れるって思ってるんかな? 思ってないだろうな。自分たちだけで楽しんでるよな。これこそ悟りの境地なんだろうか? 楽しそうだ、本当に楽しそうだ、When I Write A Bookなんて昔を懐かしんでるボケ老人の境地だ、いやこれは誉め言葉だゾ。(オトシャベリより改稿)

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Paul Geremia / Hard Life Rockin'Chair

■素晴らしい音楽に出会った。HoboシンガーとしてリヴァイヴァルブルーズのSSWとして世に現れた男、ポール・ジェレミア。彼の73年のこの作品はメリーランド州のマイナー・レーベルAdlphiよりリリースされていたもの。
■ほぼアコギとハーモニカの弾き語りで録音されたこのアコースティックブルース集は、ウッドストック派にも似た自由で音楽の尊厳あふれる精神を感じる。しかし、乾いているくせにどことなく潤いのあるその音は、Ronnie LaneなどのUKフォークを想像してしまう部分もある。
■孤高の人という部分ではVan Morrisonやロニーとも近いのかもしれない。一匹狼のホーボー生活(今でも実際に全国を放浪しながら演奏しているらしい)が作り出す音は聞く者が内包する解放の欲求をじわりじわりと刺激する。名盤。公式HPはFishheads

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Paul Simon / Hearts And Bones

■ポールサイモンという人はS&Gという稀代のフォークデュオからスタートし、レゲエ、スワンプ、ソウル、フュージョン、南アフリカ、ブラジル等々さまざまな音を探求し世界に紹介してきた。そんな彼が83年に唯一原点回帰したアルバムがこの「ハーツ&ボーンズ」だ。
■ニューヨーカーのストレスフルで繊細な心理を描いた歌詞とつぶやくような唄いまわし、弦の音色に異様に気を使ったアレンジ。。。一曲目のスリリングで激しいナンバー「アレジー」(アレルギー)を除けばそこにはフォークシンガー・ポールサイモンがいる。ぎょろ目が疑心暗鬼な心理をよく表しているポール、しかしどうしても優しくしてしまうポール。ボクはポールとウディ・アレンという人がかぶって仕方がない。どちらもNYを愛するセコい癖に憎めない、愛らしい(そしてチビでハゲの)ユダヤ人だからだろう。
■このアルバムは自分のホームグラウンドで自分らしい(内向的な)歌ばかりを10曲したためている。当時「S&G復活アルバムとなり損ねた」とか「ポールサイモン唯一の失敗作」などと世評は散々だった(サイモン自身、凹んで別荘に閉じこもってしまった)が、このアルバムがS&Gのアルバムとなっていたら本当に酷い作品となっていただろう。それほどまでにこの作品はポールの個人的な音で埋め尽くされている。大体ガーファンクルが「きっとボクは考えすぎなんだ」なんて曲を歌うなんて想像できない。
■ポップスターではなく一人の人間としてのポールの揺れたり迷ったりする人間臭い様が本当に上手くパッケージされている。だから世評は酷くても、ポールファンの中では大変人気がある作品である。

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Rufus Wainwright / Poses

■ヴァン・ダイク・パークス唯一の後継者というのは言いすぎだろうか? 何年か前にGAPのコマーシャルで唄っていたり、映画I am Samのサントラではアクロス・ザ・ユニバースを唄っていたといったら分かるかも知れない。この美しいゲイボーイはフォーク・シンガー、ロードン・ウェインライト三世とシンガーソングライター、ケイト・マックギャリグルの息子であり、オペラやクルト・ワイルにはまり、NY州にある名門校ミルブルック・スクールや音楽学校で学んだ正真正銘の「音楽界のプリンス」なのだ。
■正当な血と正当な教育、そしてポップスターとしての正当な性癖(爆)を持ち、ローリングストーン誌等でモデル業もこなすという人もうらやむようなルックスを持った王子様。あぁ鼻持ちならない。これがくだらない流行モノPOPソングなんかやっていたらよかったのに。
■淡々とリフレインするピアノをバックに独特の鼻にかかった声でむかし話を聞かせるように幕を開けるPOSES。フェアリーテイルの世界に迷い込んだのかと錯覚してしまう。衒学的なストリングスにセクシュアルな雰囲気さえ感じてしまったら、もう彼の虜である。#4などは通俗的な都会的なポップスの範疇に入るのだろうが、彼の気だるげで甘ったるいボーカル(とコーラス)がかぶると享楽的で奢侈な生活から堕落し滅亡へと転がり落ちていく青年の歌になってしまう。
■爽やかな曲も古典的な音も都会的なサウンドもすべて包括してルーファス風叙事詩となる。それはさながら舞台劇のようであり小説のようでもある。間違いなくPOPソングではない。一つの「世界」とでも言ったほうがいいだろう。確かな知識と技術に裏打ちされた音楽の「世界」、その意味で彼はヴァン・ダイクの後継者であり、ヴァンが彼を認めて助力を買って出た所以だろう。
■知的で美的で古典的、しかしナルシスティックエピキュリアンで繊細なゲイボーイ、彼はきっと何事にも正直なんだろう。人間の二律背反の欲求を隠すことなくさらけ出している。全てがマッチしているだけに鼻持ちならないが、何も隠すことの出来ない彼は一番信用に足る人物なのだろう。アメリカ生まれのカナダ人が作った英国風POPワークの秀作、惚れます。

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Ruben Gonzalez / Introducing...

■77歳のデビュー作。半世紀以上もキューバの音楽界のビッグネームたちを支えてきた一人のピアノマンが初めて自分を世界に問うた作品だ。
■しかしそこには気負いも我欲もなく、単に「綺麗なピアノだったので弾きたかった」だけだという。そんな本物のミュージシャンの音色は浜辺で遠くから聞こえてくる潮騒のように緩やかで心地いい。生を謳歌するでもなく唾棄するでもない、聴衆を楽しませることだけを考えて一歩一歩を確実に歩んできた男の存在の分だけ、このアルバムはあたたかい。そして誠実だ。
■映画「ブエナビスタ・ソウシャル・クラブ」で脚光を浴びたキューバンミュージック「ソン」のもっとも安らかな一枚。1996年作。

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Paul Simon / Songs From The Capeman

■S&GのSであるポールサイモンの97年の作品。
■NYCのプエルトリカンSalvador Agronの半生を描いたミュージカル「ケープマン」のサントラとして発表されたこのアルバムは50年代のラテンを意識して作られている。
■「コンドルは飛んでいく」の作曲で知られるように、ポールの曲は中米のリズムの方がアフリカやブラジルをやっている時の数倍もしっくり来る。 まるで昔のダウンタウンのプエルトリカンゲットーに迷い込んだようなアルバムだ。
■貧困や暴力や差別が渦巻く街、しかしそこに根付いている人々は健気に、しかし図太く日々を暮らしている。貧しくも楽しい我が家、そんな雰囲気が優しい気持ちを引き出してくれる。
■サルサの名歌手Ruben Bladesの歌声も必聴。

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Rickie Lee Jones / Girl At Her Volcano

■Rickie Lee Jonesの企画モノGirl At Her Volcanoだ。カヴァー曲やライブなど計7曲を収めた25センチレコード、若い人は見たこともない規格だろう。
■湿ったピアノに支えられながら、自分の好きな曲を伸びやかに歌う若きリッキーの歌声に中学生のころドキドキしたものだ。どんな曲でもひとたびリッキーが歌うとリッキーの曲になってしまう。「マイファニーヴァレンタイン」も「渚のボードウォーク」もここで聞く限りリッキーの自作曲としか感じられない。こういうのをオリジナリティというんだろうな。
■と、思ったらトム・ウエイツの作品である「虹の袂」を聴いていたらアルコールが欲しくなっていた。これはへべれけトムの曲せいなのだろうか? それとも飲んだ暮れリッキーの歌のせいなのだろうか?(オトシャベリより改稿)

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