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Womack & Womack / Family Spirit

■Womack&Womackの夫婦デュオの音を聴いているととても満ち足りた感情が湧いてくる。CecilとLindaの音楽活動は長く、そのデュオワーク以前から栄光に輝いている。Cecilはウーマックブラザーズ(ヴァレンティノズ)のメンバー、つまりBobby Womackの弟だし、Lindaはサム・クックの娘だ。二人はソングライターチームとしてテディペンタグラス・アリーサフランクリン・ウイルソンピケットらをフォローしていた。日本で言えば山下達郎と竹内まりやのデュオみたいなものだろう(笑)。
■正直言って彼ら自身のアルバムは甘い。一曲一曲は丁寧で誠実なつくりをしているが派手さにかける。しかし、その音楽への気持ちは伝わってくる。しっかり耳から、敬意と愛情と信頼が。それがとても気持ち良くって思わず、リピートで聴いてしまう。一曲一曲は心に残りはしないが、満足感が残る。それは91年発表の4枚目のアルバムFamily Spiritの表題曲のアコースティックソウルを聞くだけでわかると思う。ひしひしとその誠実さが伝わって聞いてよかったと思えてくる。
■その満足感はたぶん、互いに相手に対して、言い知れないくらいの信頼と尊敬を持って音楽を作っているからだろう。4枚目のアルバムFamily Spiritのジャケットのお腹を大きくしたLindaとCecilが寄り添う姿を見ているだけで夫婦の絆がしっかり伝わってくる。彼らのアルバムはどれも信頼と尊敬という絆によって出来あがっている。アメリカの夫婦アーティストモノでは珍しいくらいだ。こんな風に夫婦で1歩1歩、手を取り合って歩いていけるなんてとても素敵なことだと思う。

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渡辺貞夫 / Rendezvous

■世界でもっとも認められた日本人アーティスト渡辺貞夫の84年の通算42作目のアルバム。ラルフマクドナルドのプロデュースによるNY系アーティストによるセッションの3枚目かつラストということでとてもこなれた感じの音作りになっている。
■ナベサダの柔らかいサックス(とRoberta Flackの歌声)の表情がうまーく活かされるように全ての音が配置されており、抑制の美までが感じられるまさに日本人好みの音。それが世界的に受け入れられたのだからラルフの力は大したものだ。
■ここでのTeeはフェンダーに徹している。彼の柔らかい音を楽しみたければ絶好の一枚。

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The WIYOS / Porcupine

■GrisGrisさんの紹介で「ニューヨークから登場し、ニューオーリンズで喝采を浴びつつあるというスウィンギーなフォークトリオ」とか。ちょっとイナセなブルーズカントリー。いかつい兄ちゃんがバーボンをボトルからグビグビやりながら唄っている感じがとてもいい。
■アコギとウッドベースにボーカルがハーモニカやカズー、洗濯板などで色付けしている。ジャグバンドとかフォーキーサウンドとかいうよりは昭和歌謡系ブルーズのアコ版かな、とても雰囲気が良い。
■レビューでは「カントリーフレイバーをジャンゴやガーシュインやファッツ・ウォーラーなどの都会サウンドに降りかけたような」という言い方をしているが、どちらにしても古きよき匂いのするサウンド好きならまずイケルでしょう。ヘヴィローテしています。タイトルのPORCUPINEはサボテン。

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The Word / John Medeski / North Mississippi Allstars / Robert Randolph

■Organ Jam meets Mississippi?かと思いきや、とんでもなく明るくすがすがしいペダルスチールの音に驚かされた。MMWのJohn MedeskiがRobert Randolphのペダルを聴きたいがためにThe North Mississippi All Starsのサポートを得て作ったユニットThe Word。
■「言葉」というユニット名なのにペダルスチールを中心としたインストアルバムというのはユーモアなのか、と思ったが、Wordとは聖書の言葉のことらしい。つまりインストのゴスペルアルバムなのだ。歌詞なくして霊歌をどう唱えるのだろうと危惧するのは野暮なこと。ランドルフの一直線な音色は、信仰あるが故の迷いなき音なのだろう。
■サウンド的にはサザンロック系のブルーズなのだ。色々指摘されているようにAllman Bros好きのする音だろう。しかし、ロバートの弦の迷いのなさ、歓喜に満ちた純粋さをもって神にささげる音であると確信できる。聴いていてうれしくなる音、まさに福音だ。

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Van Dyke Parks / Discover America

■1972年発表のセカンド。アメリカという大いなる新大陸の(開拓と征服の)歴史、感情、魂と懐の深さ、そのすべてをたかだか40分弱に凝縮してしまった驚愕のサンプラー集。ここにはアメリカがありアメリカしかない。
■アメリカの歴史といえばポップスの歴史であり、エンターテインメントの歴史でもある。つまりすべての「POPなもの」の集合体ともいえる。
■ヨーロッパの20世紀を「ボレロ」に凝縮したように、アメリカの20世紀はここに集約される。しかしそこに荘厳さはなく楽しげなリズムしか聴こえてこないのがあの国だ。愛情と才能のみが成し得た20世紀最大の音楽の偉業。

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Van Morrioson / Veedon Fleece

■孤高のSoulシンガー、ヴァン・モリソン。白人でありながら、黒人以上にソウルフルな彼の歌声は、本当に魂の中に直接歌いかけてくる。
■真摯な姿勢で音楽と対峙するヴァンの歌声は、修験者のような極みを持つ70年代初期の音から次第に黒人SOULの色合いを帯びてきた、それとともに精神性は孤独な修行の叫びから、ヒーリングをする伝道師のような宗教的な意味合いを持つようになってきた。現在は遠く彼岸に行ってしまったかのようだ。
■そんな彼の意識の流れの中で、ちょうど中庸の時期のアルバムがこのVeedon Freece。孤高の人でも宗教家でもない、等身大の男としてのVanの安定した優しさが心に響いてくるような曲が詰まっている。

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Van Morrison / It's Too Late to Stop Now

■Van絶頂期の2枚組。まだ「あっちの世界」に行っていない若い頃のライヴで、限りなくソウルフルなボーカルと「Caledonia Soul Orche.」による究極的にこだわった最上級の演奏が堪能できる。
■貫禄があり、宗教家然としてきた80年代以降よりもこのころのエネルギッシュに叫んでいた求道者/苦悩者としての歌声のほうが、はるかに魂に響いてくるのは、私自身もまだ「道の途中」だからかもしれない。
■クラシックでもジャズでもポップスでもソウルでもないすべてを超越した演奏があるとすれば、まさにこういうものをいうのだろう。「悲しき叫び」のカバーを含め全てが必聴だ。

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Van Morrison / Moondance

■ヴァン・モリソンは迷った事があるのだろうか? 彼の音楽を聴いていると達観の境地にいる様に思えてしまう。とても熱いモノがある。しかしそれを伝えるために、叫んだり、暴れたり、泣いたり、訴えたり、そんなことは絶対しない。彼は切々と必要な言葉を紡ぐだけだ。ああ、この人には大切なものがわかってるんだ。信じるものがあって、それに対して自分の歩幅で、ゆっくりではあるが確実に歩いているんだ。そういう気になってしまう。
■ソウルフルと彼を評する人は多い。しかし、その言葉は、ポピュラー音楽の言語内では、オーティスやスティーヴィやアレーサの音を思い浮かべてしまう。ヴァンの音は決してソウルミュージックではない。しかし、明らかにソウルフル(魂に満ちた)音なのである。
■MoondanceにCrazyLoveという曲がある。同様なタイトル(&内容)の曲は数え切れないほどあるであろう。どの曲も熱く愛を歌い上げている。しかし、こんなに熱情を抑制しているのに他人の心にまっすぐに染みていく表現のできる曲は他に知らない。何にも動じることなく、ただ信じた道のりを歩んでいく。信じる愛、信じる人、信じるモノのためには自己犠牲も厭わない。しかし、その情熱を決して表沙汰にはしない。靜かにそして着実に歩むだけなのである。そんな彼の歌を聴いていると、普段の流されて生きている自分の姿が恥ずかしくなってくる。
■Moondanceは発表は1970年。以前レコードコレクター誌で音楽評論家大鷹俊一氏に「スティングが2枚組アルバムで大げさにやろうとしていたことを4分半に凝縮している」と言わしめている。その4分半とは、タイトル曲Moondance。Popsの手法を取りながらインプロビゼーションJazz的アレンジとスピリチュアルなボーカルが心にえも言わせぬ印象を残す逸品である。
■このアルバムを含め前後10年ほど、Vanは本当の意味でのフォークミュージシャンとして、地べたを這うように生きる人々の魂を揺さぶる音楽を作っている。まさにソウルミュージック。まっすぐ人の心に訴えかけてくる。その訴えには迷いがない。達観の境地である。彼の歌声ように何も迷うことなく、自分の信じる方向へ歩いていける、そのようになっていきたいと思う。それは確かに現代の生活にはとても不器用な生き方だとは思う。しかし人はやはりそれを笑うだろうか?

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Willie Henderson and the Soul Explosions / Funky Chicken

■1969年にBRUNSWICKからリリースされたこのファンク/レアグルーヴ大名盤に4曲のボーナストラックを追加して再発。ラテングルーヴのブガルーがぎっしり13曲、相当ヤバ気でアブナい雰囲気が伝わってきます。喧騒の中にホーンをたたきつけるようなイントロで始まる#1(実は一曲目がボーナストラック)のかっこよさ、Slyのフレーズを使ったパーティファンク#2の盛り上げ方、ここですでに逝ってしまいそうです。
■続くオルガンファンクの#3やどうしても身体を動かさざるを得ないラテンチューンのタイトル曲(Pt1・Pt2)、妙に爽やかなコーラスが印象的なカバーPOPチューンの#7等々聴きどころ盛りだくさん。お気に入り三重丸のリイシューです。これだけ黒々と熱いとBGMには到底ならない。いざダンステリアへGo!

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WYOLICA / who said “La La…”?

■J-Clubというジャンルは盛んだが、まだ混沌というか、誰が誰だか音で判断できないヤツラが多くて困る。特に数年前に流行ったClub Devaという女性ボーカルモノは誰が誰かさっぱりわからない。各々の個性よりも大沢氏や朝本氏らプロダクション側の個性で聞かされているような感じだ。
■その中でこのワイヨリカは異質だ。大沢氏の秘蔵っ子としてデビューしたazumi(ボーカル)とso-to(アコギ)のデュオは、その構成からもわかるようにアコースティック性の高いユニットである。「アコースティックヒップホップ」それだけでも充分個性的だが、azumiの歌声はそれ以上にオリジナルである。
■初期のCHARAのような搾り出すような切なさといじらしさを持っているくせに、妙に芯の強さを感じさせる歌声、「どんなオンナなのだろう」と思わず興味を持ってしまう。淡々と唄うその台詞が閉じている心にすら簡単に入ってきてしまう。こんないじらしくも美しい声のオンナに出逢ったらちょっと危ない、いやかなり。。。(笑)
■DragonAshの降谷建志のゲスト参加や大沢伸一のプロデュースってことばかりが話題になったファーストアルバムだが、是非彼女の声と大沢氏とso-toが作り出したアコ・グルーヴを感じて欲しい。このアルバムの素晴らしさがわかるはず。

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XTC / Apple Venus Pt. 1

■99年に発売されたApple Venus Pt. 1は翌2000年発売のWasp Star (Apple Venus Pt. 2)と対になっており、1がアコースティック2がエレクトリックなXTCを見せるという企画で作られた。
■アコースティックというと多くの音楽ファンが想像するのがUnpluggedのような、アコギを中心としたバラードアルバムか、トリオJazzのようなものだろう。しかし何事も一筋縄ではいかないXTCの「アコースティック」は室内楽のような弦楽を全面にだし、ホーンセクションというか管楽も多用、まるで「英国式庭園殺人事件」のサントラのような作りになっていた。わかりにくければ、全体がThe Beatlesのエリナーリグビーだと思っていただいて結構だ(荒っぽいな〜)。
■本当にPOPSのアルバムなのだろうかと思うくらい、静寂と格式の高さが漂う宮廷楽のようだ。しかし、何故かPOPな印象が残る。絶対これはポピュラーな音楽なのである。言っていることが矛盾するが、そこが、屈折したPOPアーティストであるXTCの存在理由なのかもしれない。 そんな方法で大英帝国の伝統的旋律とPOPの理論を組み合わせ、英国近現代音楽の結晶を作っていくAndy Partridge。彼は商業的には大成功を収めることが出来ないのはわかっていても、決して日和らずに古くて新しい音を作り出していくのだろう。(オトシャベリより改稿)

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XTC / SKYLARKING

■世界3大屈折ポップ職人の一人(あとはTodd Rundgrenと鈴木慶一)アンディパートリッジ率いるXTC86年の傑作アルバム。プロデュースはトッド(絶対任せてはいないはずだけど)。
■まるでマッカートニーのようなめくるめくメロディを湿度や潤度の高い音で包んでいる。みずみずしい森林の中にたたずんで妖精や小動物の動きを楽しんでいるような気分になる。POPSの言語内では、森や樹木という自然を表現する音は、乾いた弦の音が多かったので、この湿り気には非常に驚きを持ったものだ。
■アンディ本人はトッドとの確執ゆえに否定しているがまさしく英国ポップの金字塔

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Wilko Johnson / Solid Senders

■ウィルコのギターはまさにサムライである。慣れ親しんできたロックンロールナンバーが彼の手にかかると、特攻隊の精神歌のようになってしまうのは、その攻撃性によるのであろう。
■Dr.Feelgood脱退後、リーダーであるリブローへの恨みのみをバネに作り上げたこのアルバムは、その経緯とウィルコ自身の個性が絡み合ってアグレッシブとしか言いようのないものになっている。
■大音量で聴くとギターの竿でぶった切られそうな気になってくる。目の前にある全てのものをなぎ倒して進む彼の音こそロックという概念の具現化ではないだろうか?

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Willie Colon & Ruben Blades / Siembra

■いきなりチョッパーベースで始まるこのアルバムは時代を超えた名盤であるとともに70年代最大の問題作。そしてサルサ史上最大のヒット作である。
■卓越した音楽センスと時代を捉える機微で、後にサルサをメインストリームに取り込むことに成功した男ウイリー・コローンと、唄うことでラティーノの団結と解放をとつとつと訴えてきたルーベン・ブラディスの能力の結実。センスと魂が手を組んだ本当の名作だ。
■このアルバムの出現が、その後のラテン諸国に生きる人々の意識の中に深く入っていったことは認めなくてはならない。ジャケットの乳飲み子たち、それは新しい時代を生きるラティーノたちの姿を象徴しているのだろう。

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