オトススメY,Z,&Compilation






吉田日出子 / 上海バンスキング

■オンシアター自由劇場公演「上海バンスキング」、79年の初演より数度のロングラン公演を経て現在は伝説となっているプレイだ。そのオリジナルキャストによるOSTがこの81年のアルバムだ。たしか深作監督により松坂慶子・風間杜夫で映画にもなったはず。
■なによりも吉田日出子の歌声にうっとりさせられる。なんとベストキャスティング、太平洋戦争直前の退廃的な雰囲気をうま〜く表現している。音の方も30年代のデキシージャズからビッグバンドへ流行が移っていく時期を巧妙に表現していて楽しい。はっきりいって演劇がなくてこのアルバムだけでも充分楽しい、いやこのアルバムだけで名盤だろう。いつも小難しいJAZZばかり聞いている人にこのアルバムで楽しむということも知ってもらいたい。

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Buena Vista Social Club(OST) produced by Ry Cooder

■十数枚あるRyのアルバムで、彼が一流のミュージシャンでクリエーターでボーカリストだということは周知の事実だが、このアルバムで彼が一流の編集者(音楽の)でもあることが分かる。
■このアルバムを聴くと、Ryが本当にキューバ音楽に愛情をもっていて、そのミュージシャンを尊敬していることが感じられる。そして彼らの最高の部分を引き出そうと必死になっている感じが伝わってくる。だからこのサントラは聴いていて、とても気分がいい。
■すでに音楽を捨てて久しい、棺桶に足を半分突っ込んでいるような年寄りたちに、もう一度楽器を手に取らせ、そして、最盛期よりもいい音を出してもらう。そんな難題にRyは挑戦し、見事クリアしたのである。いい気になってソロだしたり、ワールドツアーしたりする気になるくらい、彼らを心地よく演奏させたのだから見事だ。
■Ryの異文化の取り入れ方はとても好感が持てるし、とても素敵だ。そして何よりこのアルバムはとても気分がいい。聴いていて穏やかで楽しい気分になれる。だから一回聞いてみてください。そして、映画、こちらも必ず見てください。いい映画ですWimWendarsの映画の中でも最高作のひとつかと思います。(オトシャベリより改稿)

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Crepuscule Collection 4;Death Leaves An Echo

■87年リリースのCREPUSCULEのコンピ、当時多少でも名が知れていたのはIsabelle Antenaくらいだったろう。しかし、その硝子のような透明感や、爽やかなんだけどどこか狂気を感じさせるヒヤっとした感触は今でも変わらない。
■まだ無名だったポールヘイグのエレポップから始まり、アンテナのボッサリズムに心地よくなる。思わず眠りそうになると、WimMertensの耽美でひ弱な小品の静寂さに目覚めさせられてしまう。そしてPaleFountainsのネオアコちっくな曲とPiscineCharlesの淡々とした「音楽図鑑」ぽい曲。少しずつ心地よさより、静寂の狂気度がましていく。
■そして崩れかけた色気を見せるThe French Impressionistsの猥雑なジャズに、A面最後はまったりとした物悲しげなバラード、TheBorderBoysつまりLouis Philippe卿の曲で終わる。
■そしてB面、ファンクに移る直前のゲンズブールのようなエレポップはWinstonTong、なんかBowie@80年代のへたくそなバラードのようだ。哀愁ありすぎて重たい。何故この人はこんなに重く哀しげな声なんだろうと聴き込んでしまう。52nd Streetもエレポップ具合も今ではお笑い種だが、ボーカルの女性が妙に攻撃的過ぎてたじろいでしまう。勝気な娼婦に迫られているかのようだ。
■StantonMirandaの歌は白痴的、口から涎たらしてそうだ。そしてLudusという敢えてお洒落さを前面に出したような歌に戻ってこのアルバムは終わる。すべてが透明で白痴的、悲しみを隠して知性を保つ、そんなアルバムだ。
■「死は残響を残して去る」そんなタイトルのこのアルバム、音もはかなげだが、両手いっぱいで顔を隠した少女のジャケも素晴らしい。ひとり放擲された悲しみを気丈さで覆い隠す、そのことが却って精神の崩壊を導く、そんな物語が浮かびそうな写真は、音楽を捨てて単身渡仏した佐藤奈々子さんの作品だ。
■クレプスキュールという、1つの時代の風刺画のようなレーベルが残した儚い歌声がつまったこのアルバム、聞き逃せないものです。(オトシャベリより改稿)



ゲンスブールを歌う女たちVersions1 Femmes

■「人生はラブ・セックス・ロックンロールだ」なんて50過ぎても言い放てたSergeオヤジの凄いところは、そのまんま人生だったことだろう。シャンソンとJAZZしかなかったフランスにPOPSを根付け、さらには80年代初めにはすでにラップまで取り入れ、フランスの大衆音楽を引っ張り続けた男。セルジュ、Boris Vian以上に重要なパリジャンだ。
■しかし、実はセルジュの凄いところは、プロデューサー&コンポーザーなところだと思う。このアルバムを聴くと彼の凄さがわかる。70年代の初めにしてすでにNew Waveの芽を持ち、アメリカのPOPSに決して負けないPOPを作っていた。
■個々のアーティストの説明は省くがどれも魅力的なものばかり。個人的には中学のときに聴きまくったフランソワーズ・アルディとイザベラ・アジャーニは涙モノです。アルバムを通して聴いてみてわかるのは実に個性的な曲が多いこと。それもセルジュの個性ではなく、各シンガーの個性に合わせた曲が多いということだ。
■例えばJam&Lewisでも小室哲哉でも大瀧詠一でもトッド・ラングレンでもいい。彼らがプロデュースしたアルバムはどれも素晴らしい。しかし、それは彼らの一貫した音楽性が結集された素晴らしさで、つまりはシンガーが誰であっても彼らプロデューサーのアルバムなのである。JJam&Lewisの曲は、一聴でJam&Lewisだとわかる。小室もそうだ。大瀧師匠なんて大瀧師匠でしかありえない、そのアーティストが師匠の曲に耐えられるキャラかどうかで完成度が決まるようなものだ。
■しかし、セルジュは違う。自分の個性なんて関係ないのだ。この女(シンガー)の良さを充分に引き出せる音楽は何だろうという考え方なんだろう。つまりイイ女にはイイ曲、可愛い娘には可愛い曲、それがRockでもPopsでもシャンソンでもおかまいなし、その女(シンガー)の魅力がもっとも引き立つ曲であればイイという曲作りをしている。自分の娘でさえ、そのロリータ性が魅力だと思えば、その様な曲でイメージを仕上げてしまう。それでいてカッコよくPopsを進化させられる。引出しがとても多い男なんだろう。
■どんな女性でもその人のすばらしさを引き出すことの出来るセルジュオヤジ、この才能あれば俺もモテるはず(笑) (オトシャベリより改稿)

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Ghana Soundz: Afrobeat Funk & Fusion in 70's GHANA

■Fela Kutiの音源を集めたことで知られるイギリスの音楽蒐集家Miles Cleretが数度のガーナ訪問にて紡ぎだしたガーナの70年代ファンクオムニバス。圧倒的なビートの大洪水が聴く者の思考を停止させる。
■隣国ナイジェリアのFelaに代表されるアフロビートのオンパレードかと思いきや、意外とJBやP−FUNK的な音作りが聞こえてきて驚いた。また、#3のサックスソロのメロディなどは妙にクレヅマーのような短調の物悲しいフレーズが出てきてこちらも耳を引く。商業音楽の後進国(失礼!)として東西の様々な音楽を吸収しようと躍起になっている当時のミュージシャンたちの姿勢がうかがわれる。
■しかし、音的には決して先進国のソレと比較しても悪いものではない。むしろオムニバスだからこその粒ぞろいの技術が堪能できる。フェラが鬼籍に入り、セネガルのユッスー・ンドゥールが精神世界に行ってしまい、バンバータやサニーアデらが床の間に飾られてしまった現代のアフリカンミュージックシーンよりは数倍刺激的で数十倍面白いだろう。聞かせてくれたTsukaさんに感謝。

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Young Blood Brass Band / Center:Level:Roar

■「6つのホーン、2人のドラマー、独りのソウサホンとそしてMC」それがYBB。'95年にウィスコンシンで結成された8人組高校生ブラスバンドはビッグバンドのハートを持ち、ニューオリンズブラスバンドのスタイルでヒップホップやパンク、アフロキューバンなどを表現している。
■2003年発表の彼らの2枚目のアルバムであるcenter:level:roarは不思議なアルバムだ。嵐のようなノイズから一転、ソウサホンが響いたかと思えば、MCが続く。そして突然ブラスの大合唱とアフロキューバンスタイルのビートが覆いかぶさってくる。粗雑ではあるがかなり活きの良い大合唱だ。伝統的なNOブラバンの登場? 
■そうかと思えば二人のラップの掛け合いがブラスに絡むクールファンク。まるでジョージクリントン一派のようでもある。また現代っ子らしいHipHopもあればジャムバンド真っ青の熱いバトルが聴けるフュージョン曲もある。そのごたまぜダックスープのどれもがキマッている。すこぶるカッコイイのだ。オールオーバーザミュージック With マーチングバンドスタイル。
■こいつらはナニモノなんだろうか? とりあえず今後を見守ることにしよう。少なくとも誰が買っても損のないアルバムなのだから。

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The Yes Yes Boys / Why Say No?

■ラグタイムにブルーズやジャグ、ボードビルまで聴かせてくれるオールドタイミーなウクレレ奏者Del Ray女史を中心にウォッシュボード、サックス&クラリネット、ウッドベースという四人で作られたYes Yes Boysのデビューアルバムがこちら。
■近年のジャグ/スィングブームに乗せられて、デル・レイさんもやっと日の目を見たことでしょう。デキシーにホットスィング、ジャグ、ジャンプなどの要素を取り入れて縦横無尽に跳ねまくっているアルバムです。
■聴きどころは茶目っ気たっぷりのデル・レイのボーカルと柔らかでテクニックのしっかりしたクレイグ・フローリーのクラリネット。しっとりそして小粋に時間を彩ってくれます。デル・レイのソロも要チェック!



山梨鐐平 / La Habanera

■世の中では吉沢秋絵のデビュー曲「何故?の嵐」の作曲家とした方が分かりやすいかもしれない彼。元Do!のボーカル&チョコレッツのギターで83年にソロデビューした山梨の2枚目La Habaneraは彼の中でも異色なアルバム。
■イタリアンポップとサンバをねちっこく歌う事でメディテラニアンなイメージを作った秀作。「再会物語」というオリコンには入らなかった話題作も産んだ。
■甘く切なくエキゾチックなバラードが得意な彼、しかし、世の中にはほとんど受け入れられなかった。時代錯誤過ぎるのだ。ラ・マンとシエスタとかジュテームとか、サテンのドレスにボヘミアングラスとか、こっぱずかしくなるような言葉が普通に出てくる。
■まぁかしぶち哲郎さんがあんまりカッコよくなかったような感じです(失礼!)。でもボクは彼が好きだ。13歳以来聴き続けている。だれにでもそういうアーティストっているよね? (オトシャベリより改稿)



山下達郎 / Pocket Music

■山下氏の最もプライベートっぽいアルバム。Ride On TimeにはじまりFUNKY FLUSHIN'、LOVELAND,ISLAND等の「夏」=達郎のイメージを払拭したい思いで出来たアルバム。また個人レーベル立ち上げ第一弾でもある。
■雨の曲が多いというわけではないが、どの曲も優しく温かく潤んでいる。かなりの部分を打ち込みで(宅録で)作ったと本人は言っていたが、その感触が全然ない。以前の作品よりも人肌っぽいものさえ感じさせる。
■以前ラジオで氏が、ライブで立ちががって欲しくない、座ってじっくり自分の演奏を聴いて欲しいということを言っていたが、このアルバムはまさに座ってじっくり彼の優しさに浸って欲しいアルバムだ。オススメは、思わず楽しくなってしまう#1、しっとり落ち着ける#2と#7。

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ピーター・バラカン選曲・監修 / SOUL FINGERS ... and Funky Feet

■残念ながら日本では、熱心な一部のジャズファンかヒネクレものの映画サントラフリーク以外ではオルガンという楽器はとても地位が低いものだった。それは幼稚園のお遊戯の時間がいけなかったのだろうか? あれが日本人にオルガン=子供の時間というような印象を与えてしまっていたのだろう。
■また、ピアノが弾きこなせないからオルガンへという方程式からも抜けられなかった。だからオルガン奏者はあえてキーボーディストを名乗り、松岡直也やカシオペアフリークの顔をするしかなかった。思えばスティーヴ・ウィンウッドもグレッグ・オールマンもキーボーディストだったけどオルガニストだと知ったのは大人になってからだったなぁ。
■しかしそんな苦境をぶち破ってくれたのがこのアルバム。1955〜'75年というオルガン全盛期の音を敢えてジャズというくくりではなくソウルミュージックとして見せなおしてくれたのだ。このアルバムがなければ未だにSouliveのライブには腕を組み難しい顔をして首だけでリズムを取る「ジャズライフ」愛好家が集っていただろう。 ■ジミー・スミス、ジミー・マクグリフ、ジョン・パットン、フレディ・ローチ。。。(日本での)有名無名のオルガニストたちの音のエンサイクロペディア。まず何よりこのアルバムを聞け、踊れ、しびれろ、そしてバラカンさんに感謝せよ。



ROCK A SHACKA VOL.2 「VOICE OF THE PEOPLE」
SELECTED BY SHIN(DETERMINATIONS)

■「スカを作った男」、「オリジナルルードボーイ」、「モハメド・アリと殴り合いをした男」等々、伝説・肩書きには事欠かない男プリンス・バスター。最盛期だった50〜60年代の彼自身の曲と、彼のプロデュース曲を集めたコンピレーションアルバム。日本のスカのトップバンド「デターミネーションズ」の足立晋一さんのセレクションだ。
■私はスカ自体は門外漢だから歴史や構成やそういう深いことはわからない。しかし、このアルバムは熱い、ひたすら熱いのだ。スカというと普通想像するのはマッドネスやスペシャルズなどのソフィスケートされてはいてもちょっとコミカルな音。ブンチャブンチャというのんきなリズムは人の心を楽しくしてくれるはず。
■しかし、このアルバムはゆったりなリズムの癖に、どの曲も刃物のような鋭さと場末のような猥雑さを持っている。とてもマッタリ楽しめる一枚ではない。ストリートの闘争や貧困、危険だがとても歓楽的な雰囲気を味わえる。それもとても熱く、火傷する位に熱く。
■1曲目の叩きつけるようなシンバル&ドラムに続く瑞々しいピアノの響き、ここまではちょっとトロピカルな感じもするが、そこから始まるトランペットやらサックスやらがなんとも怪しい雰囲気を作っていく。そしてバスター自身のくぐもった歌声の2曲目、決してドスが効いていたり雄叫びを上げるわけじゃない。かなり抑制された歌声が、逆に隠された「怒り」や「叫び」を想像させてしまう。
■たぶん、このアルバムの音質はかなり悪い。どの曲も鮮明に聞こえはしない。しかしそこがラジカセを持ち歩くストリートの若者たちをも連想させてしまうのだろう。ブンチャブンチャという間の抜けたリズムが、本当にクレイジーに聞こえてしまう一枚。絶対買いです。

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鈴木惣一郎監修・選曲 Jump For Joy Happiest Sounds For Relaxin'

■ワールドスタンダードの鈴木惣一朗の監修・選曲・リマスタリングによるコンピ。まだジャンルもなく、音楽がビジネスになっていない1930〜40年代の市井の歌唄いたちの音楽が中心になっている。
■のっけから20世紀最初のシンガーソングライターHoagy Carmichael。忘れ去られた時代の荒い音源だが、とても心が楽になる。
■「楽しくなる」とか「優しくなる」とかではない、もっと非能動的で非受動的な、誰にも促されず、誰の力も関わっていない感じ、つまり「楽になる」のである。無名の音楽家ばかりの20曲、50分であるが、深夜眠れない時にはこのアルバムはとてもいい。

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Sweet and Lowdown「ギタ−弾きの恋」オリジナル・サウンドトラック

■ウディ・アレンの1999年の映画「ギター弾きの恋」(Sweet and Lowdown)のサウンドトラック。いつも映画の内容にこだわらず、良質なGood Old JAZZをフィルムに重ねてきたウディ。しかし、今回は本格的なJAZZ映画というだけあってOSTに対するこだわりも一入だろう。
■この映画は伝説のJazzギタリストジャンゴ・ラインハルトの次にギターが上手いことを自認する架空のギタリストの物語。
■アルバム全体に流れるのは、樹の温もりを感じさせるアコースティックギターのSwing。デューク・エリントンやハイマンらのオールドスタイルJAZZの数々が慎み深くかつ温かく響いてきます。

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