New Orleans QR






Robert Walter / Super Heavy Organ

■2005リリースのオルガンファンクアルバム。1曲目からヘヴィなビートですっごく切れがいい。オルガンとテナー、ベースにドラム。シンプルだが非常にファンクネスを感じる。2曲目、斬り込むようなスネアが全身を電気のように走りぬける。3曲目は短いミディアムテンポのナンバー、じらされているようで狂わされる、イキそうだ。
■しかし4曲目になると急にジャジーになってしまう。せわしないリズムとメロディアスに吹きまくるテナー。イ、、イケない。僕のCDリストを見てもらってもわかるかもしれないが、やはりヴィダコビッチは苦手らしい。
■スタントン・ムーアが最高で、ヴィダコビッチは苦手だということを再認識させられたアルバム。12曲中5曲がStanton Moore、しかしこれだけでも買う価値がある。

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Ronnie Barron / The Smile Of Life

■Dr.Johnになるはずだった男、ロニーバロンが細野晴臣プロデュースで発表したアルバム。78年のセカンド。
■2・5・6・7がNOでの録音。クレジットは
Ronnie Barron Vocals, Piano
Mac Rebennack Moog,R.M.I.,Clavinet
Art Neville Organ
Joseph Modeliste Drums
Leo Nocentelli Guitar
George Porter, Jr. Bass   てな感じでミーターズ
それ以外が
Ronnie Barron Vocals, Piano,Organ,Clavinet,Solina,Marimba,Electric Piano,Pianica
Haruomi Hosono, Takashi Onzou Bass
Shigeru Suzuki, Ginji Itoh, Kenichi Inoue Guitar
Tatsuo Hayashi, Yutaka Uehara Drums
Nobu Saitoh,Ronnie Barron,Haruomi Hosono Percussions
Noriaki Hashizume Banjo   
Background Vocals Kim J.Barron, Sandi A Hohn     てことでティンパン関係者
■どこがどう違うというとやはりミーターズの部分はミーターズっぽくって、ティンパンの部分はチューチューガタゴトですね。どちらが良いというのではなく、こういう(上手いが)アクのない声の持ち主の歌はどんなスープにも溶け込んでいきます。



Ronnie Barron / Revend Ether

■「Dr.Johnになるはずだった男」ロニー・バロンの評価は本国では皆無に等しい。かろうじてポール・バターフィールド・ベターデイズのボーカルの人という程度か。しかし日本での注目度は高く、細野晴臣や久保田麻琴らとの親交も篤い。
■伸びやかで無垢なボーカル、スワンプな音作り、「伝説の呪術師ドクタージョン」の役柄を拒否してしまうほどの生真面目さが華やかだが閉鎖的なニューオリンズの風土にそぐわなかったのかもしれない。
■しかしあまり粘着質ではないロニーの音作りと歌声は、ドロドロファンク未体験の方にはとても気分のいい音であろう。入門編にはとてもいいアルバム、71年発表の1st。

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Rockin' Jake / Full-Time Work

■知る人ぞ知るロッキン・ジェイクはニューオリンズ音楽の専門誌「オフビートマガジン」のベストハーモニカプレイヤーに4回も選ばれているブルースハープの達人なのだ。
■元々はイーストコーストの都会人だったジェイクの2002年のこのアルバムはR&Bというよりはロックアルバムかもしれない。バックミュージシャンもBrian Stoltz、John Gros、Ben Ellman、Theryl "Houseman" De'Clouetなんてかんじでジャムバンドの色合い。
■洗練されたラップ調のファンクだったりコテコテR&Rが入っていたり、カントリー調だったりと一曲ごとに変化が楽しめる。本当にニューオリンズなのかぁと疑いたくなるが良いものは良いということで。カッコイイです、歌もハーモニカもグロスのハモンドもストルツのギターも。

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Raymond Myles / A Taste Of Heaven

■アナタはナマでゴスペルを聴いたことがありますか? 重くも温かいピアノのリズムに導かれ、大人数のコーラス隊が「ハッピーだぜ!」というような顔をして唄い踊る。そして牧師の掛け声(問いかけ)に呼応し、観衆も一緒に歌と踊りに参加していく。
■私は今から15年ほど前、代官山のバプティスト教会に横田基地のクワィアのライブを聴きに行ったことがあります。なんの変哲もない教会で40人近いコーラス隊と一緒に踊った時は浅はかではありますがこんな楽しい神様なら信じてもいいかなと思ました。無論、私はクリスチャンでもありませんしゴスペルソングが好きでもありませんでした。しかし、クワィアのあわせて手を天にかざす、ビートにあわせて「オー、ジーザス!」と叫ぶたびに音楽の神様が僕の許に降りてきて一緒に踊ってくれるような気がしたものでした。
■当時はまだまだ名の知られていなかったゴスペル音楽ですが、21世紀に入り日本もゴスペルブーム到来、「癒し」としてのゴスペルの側面がクローズアップされています。しかしこのレイモンド・マイルズのCD「テイスト・オヴ・ヘヴン」を聴けばゴスペル=癒しだけではないと気付いていただけることでしょう。本当の(コンテンポラリー)ゴスペルというのはファンキーで、踊らずにはいてもたってもいられないくらい楽しいものなのです。

■曲目解説を交えながら今回の主役レイモンド・マイルズの経歴を追ってみましょう。  
レイは1958年7月ニューオリンズ生まれ、10人兄弟の9人目で本名をレイモンド・アンソニー・マイルズといいます。両親も教会のゴスペル歌手で、5歳で母のコーラス隊に入り、世界的に著名なゴスペルシンガーであるマヘリア・ジャクソンの葬式で歌を披露する名誉にも授かりました。そして12歳の時に書いた曲「Prayer From A 12-Year-Old Boy」がローカルヒットとなりゴスペルの神童としてその名は一気に広まります。しかしそのB面に収録された「You Made a Man Out of Me, Baby」が不謹慎だということで教会と衝突、レイ少年は他人の無理解に悩み、16歳の時に家を出て一人暮らしを始めます。
■大学を卒業するとパブリックスクールの音楽教師で生計を立てるとともに、「ニューオリンズ・ジャズ・アンド・ヘリィテイジ・フェスティバル」に参加。自らのコーラス隊R.A.M.S.(Raymond Anthony Myles Singers)を結成し、その派手な衣裳とダイナミックなライヴパフォーマンスはジャズフェスの人気アクトになっていったのです。
■編集者のレオ・サックスは当時をこう語ります「83年のジャズフェスの時、僕はゴスペル会場をうろついてた、そこで彼の声に出会ったんだ。この熊みたいな男がイミテーションの中に輝くひとつだけの宝石に見えたよ、当時はレーガンの福祉切り捨ての政策が始まり、街中に浮浪者があふれ出ていた。そんな暗い時代に彼の歌声は希望の光に見えたのさ。レイモンドの歌はドニー・ハザウェイの(自由な)魂を思い出させてくれたね(※)」。
■後にサックスは自らのレーベルHoney Darling Recordにレイを誘いレコーディングを始めます。彼はプロデュースも担当。94年から翌年まで録音したこのアルバムではニューオリンズのスタジオミュージシャン、ウィリー・ティーに参加を仰ぎました。ティーは60年代よりニューオリンズを中心に音楽活動をしているミュージシャンで、裏ミーターズとも呼ばれるファンク集団ゲイターズのリーダーや、インジャンファンクバンドの雄ワイルド・マグノアリアスのメンバーも務めている筋金入りのファンクマン。この3者のコラボレイトが「テイスト・オヴ・ヘヴン」をステキなファンクアルバムに仕立てました。

■1曲目のElijah's Rock、冒頭の女性のセクシーな歌声から始まりレイのジャズテイストで都会風なピアノが絡まり、管楽器が一気に盛り上げていくファンクソング。まるで女の子を口説くような彼の歌声と女性コーラスが絡む部分など不謹慎極まりない雰囲気、どこが教会音楽なのだろうと耳を疑う間もなく自然と身体が動いてしまいます。2曲目は爽やかなミディアムジャズファンク。早朝のテーマソングにしたい雰囲気です。
■3曲目はレイの最も尊敬するドニー・ハザウェイの「いつか自由に」、アメリカの黒人の自由への希望を歌い上げたバラード。4曲目はハロルド・メルヴィン&ブルーノーツのダンスナンバー、深夜のドライブに良さそう。5曲目はエルトン・ジョンのカバー。のっけから楽しげな6曲目のPut A Little Love In Your Heartはジャッキー・デシャノンのヒット曲。レイモンドとコーラスとの掛け合いがまさにスリリング。この4曲がどれもゴスペルとは無関係なヒットチャートからのカバー曲。
■ちょっと間をはずしたホーンの雄たけびから始まる7曲目、ニューオリンズの伝統的なセカンドラインビートを彷彿させるトラディショナルソングをレイがアレンジしたダンスナンバーです。次はしっとりしたゴスペルバラード、段々と盛り上がっていくボーカルにぞくぞくさせられます。9曲目もメロウなバラード、こちらは母クリスティンに捧げられた曲、レイモンドのピアノの腕前が堪能できます。最後の絶叫部分は鳥肌もの!
■また10曲目のLearning To Love (Raymond's Rap)はミディアムテンポのダンスチューンながらタイトル通りラップを披露。ただ、ラップ自体よりもボーカルとビートの隙間の微妙な間を楽しみたい曲。11曲目ではElijah's Rockが弾き語りのライヴバージョンでリプレイされますがこちらは小粋なブルーズ風。バーボン片手に名盤の余韻を楽しみたい佳曲です。
■しっとりとしたバラードとファンク〜ミディアムなダンスチューンを絶妙に織り交ぜ、飽きさせずに最後まで聴かせる。敬虔な神への賛美歌ですが普通の音楽好きである私たちにとっては楽しくハッピーなアルバムなのです。昔ながらのゴスペルファンには馴染みにくい音かもしれません。しかしレイはR&Bやポップスの影響を恥らうことなく前面に押し出すことで、ゴスペルを一般の音楽ファンにも親しんでもらおうと思ったのでしょう。
■レイはインタビューで以下のように応えています「僕は宗教家じゃないんだ、教会の中で育ってきただけさ。(中略)僕はゴスペルを愛してる。だけど僕は歌手でエンターテイナーだ。ゴスペルの巨匠とか偉大なるゴスペルシンガーとか言う人がいるけどそういう風に思われたくない。僕は素晴らしいエンターテイナーだと言われたいんだよ(※)」

■約50分のダンス&チークタイム、楽しんでいただけましたか? 残念ながらレイのアルバムは、他には84年の「NEW ORLEANS GOSPEL GENIUS」(Great Southern Records)と 96年のライブを収録した「Heaven Is The Place」(NYNO Records)しかありません。というのもレイは98年に生地ニューオリンズで強盗に殺されたからなのです。「ゴスペル界のリトル・リチャード」とあだ名されたレイモンドの葬儀には全国から6000人の参加があり、ニューオリンズ史上、類を見ない規模になったといいます。早逝のゴスペラー・レイモンド、そのハッピーでダンサブルな祈りはゴスペルにもヒットチャートにも影響を与え続けることでしょう。 

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Russell Batiste Jr. and Orkestra From da Hood / The Clinic

■一曲目のスーザフォンが印象的なセコンドラインの混沌ジャムに惹かれて買ってしまったバティストのソロ。バティスト自身もトランペットやギター・ベースまでこなしてる
■今年最大の収穫か?と思いきや、3曲目あたりから徐々にフュージョン臭くなってきたぞ、あれれドラマーのアルバムなのに妙にビートが後退してきてる あれれれ?
■全体的にはラッセルバティスト友の会アルバム的な感じで仲間たちが贅ぞろい;ノセンティチェリ、ジョージ・ポーター、ストルツ、ジョン・グロス、ヤマギシジュンジ、アイヴァン・ネヴィル等々、なぜか日本人の参加も多く、ノリ・ナラオカ(B)、マクニ・フクダ(G)、サトル・オオハシ(TP)、そしてヤマギシ氏というかんじ。バティスト家からもかなり参加してる。
■まあこういうアルバムもいいかな、オススメは#1、ファンクな#2、ミーターズなおじさんたちの職人芸が堪能できる#10、ノリ弾きまくりの#13、3人のドラムが対決する#18など、しかし曲数おおいな(汗  (2004/02)

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Rebirth Brass Band / Take It To The Street

■前作ライブの評判が覚めやらぬうちに発表された92年のスタジオ作。
■街の喧騒を表現したような大興奮の#1からスタートしたと思ったら#2ではいきなりジャンプサウンドに変身、ハービーハンコックあり、レゲエあり、カーミットのボーカル炸裂作ありのかなり気合の入った内容。最後にはきちんとマーチングバンド的にしめてくれるオツな計らいもあり。こりゃ楽しいね。ライブで、イヤ、街中で聴きたいね。

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Rebirth Brass Band / ReBirth Kickin' It Live! The Glass House

■ダーティダズンの弟分、91年のライブアルバム。
■派手なテクニックで聴衆を凌駕するDDBBとは違い、あくまでマーチングバンドらしきサウンドが売りな彼ら。これこそが本当のセカンドラインなんじゃないのかな?
■あまりアク(個性)が強いわけではなくあくまで基本を楽しくやっている感じ。だからといって教科書的なのではなく、伝統に根ざした部分を大切にしてる感じです。白熱したライブの雰囲気は我を忘れて聞き込んじゃいます。メロディのマイナーコードも日本人受けよさそう!

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