New Orleans S






Stanton Moore / Take It To The Street

■ニューオリンズを代表するジャムバンド、ギャラクティックのドラマーによるドラム教則本についているDVDの音源をCD化した企画もの。BOOK&DVDの発売が2006年なのでCD自体は09年の発売だが若干音が前のもの。ダーティ・ダズン・ブラス・バンドやジョージ・ポーターJr、アイヴァン・ネヴィルなどが参加している。
■ 近頃のムーアのアルバムはかなり抑制のきいた実験的ファンクジャズを繰り出しているのでこういうあけっぴろげなセカンドラインを聴けるとちょっとほっとする。 ニューオリンズの代表曲が14曲詰まった初心者でも楽しめるアルバムです。

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Sista Teedy & Paul David / Just You, Just Me

■Tricia“Sista Teedy”BoutteがPaul Davidのピアノのみをバックにジャズのメインストリームを唄ったアルバム。
■コケティッシュかと思えば急に迫力のある唄い方になるガーシュインのNice Work If You Can Get Itや寂しげにしかし情熱的なBesame Mucho、軽快なピアノの上をしっとりと唄うMy Baby Just Cares For Meなどなど、一本調子になりがちなボーカルをピアノが巧く引っ張ってくれている。
■でもレゲエとかを奔放に唄っていたファーストアルバム「Pledge To My People」の方が楽しかった記憶がある。JAZZを歌い上げるのはまだまだこれからなのかな、がんばれTeedy!

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Stanton Moore Trio / Emphasis! (On Parenthesis)

■Stanton Moore渾身のトリオアルバム。 スピード感が堪らないジャムアルバムです。トリオといってもMooreのドラムにほぼ相棒のRobert WalterのオルガンとMooreの「V」やWalterのユニット20th CONGRESSでも参加していたWill Bernardのギターというベースレス構成。
■ もちろんいつもの切れのいいムーアのドラムが一番の聴きどころなのだが、ウォルターのオルガンがかもし出すグルーヴも堪らない。そしてそのグルーヴ感をギターが巧みにサポートしているから痛快だ。
■ ムーアはGalacticではファンクからのジャム化をしてどんどん厚い音になってきているのだけど、ソロはファーストからどんどん音数が減ってきている。 簡単にアーティスト数で言っても1st(7人)2nd(5人)3rd(3人+ゲスト2人)今作(3人)。いかに少ない音でも完璧なグルーヴを生み出せるかを挑んでいる修行僧のような感じだ。この禁欲的な構成と圧倒的なノリでジャズやジャムを新たな境地に持っていこうとしているのだろうか? いつまで立っても目の離すことのできないアーティストなのだ。

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Stanton Moore / III

■前作ほどの攻撃性や趣向をこらした曲展開はない。その分じっくり曲を楽しめるのがギャラクティックのドラマーのサードアルバムだ。メンバーもRobert Walter(organ)にSkerik(tenor)で安心の音。
■ファーストみたいな禁欲さと、セカンドからつながる完成度が読み取れる。だからサードなのか? 踊れるファンクでも、プロフェッショナルなジャズでも手に汗握るジャムでもないがとりあえず地味に満足できるアルバム。スタントンのオリジナルな世界ではあるがこのまま続くと飽きる、次作は新たな展開が欲しいところ。

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The Subdudes / Behind the Levee

■なーなな なーなな なーなななあなあなーな と軽快に始まるSubdudes(未だに発音不明です サブデュードスでいいのか?)の2006年発売の7枚目。このバンドは89年デビューなんですね、聴くの初めてでしたがKeb' Mo'のプロデュースと一曲目の軽やかなポップさで即買いしました。(以前から持っていたJohn Magnieが在籍のグループだってことも忘れていました・・・恥)
■ しかしこれが染み入るようにいいんです。アコーディオンのリズムがどうしようもなく楽しくなっちゃう一曲目だけがPOPでそれ以降はシミジミとしたファンクを感じさせるアコースティックロックというか、ザ・バンドらウッドストック系が好きな人なら絶対いけるはず。曲によってはDirty Dozen Brass Bandがフィーチャーされているんですが、DDBBをわざわざ使わなくちゃいけなかったのか?と思わせるほど控えめで、全体のじんわりとしたトーンを壊さないように作られている。
■ トミー・マーロンのしんみりしたボーカルとジョン・マグニーの優し気なアコーディオンがとても心地よく、繰り返し聞いてしまう。いや、かけっぱなしにしても全然飽きることを感じさせない円熟のアルバムといえます。今年の収穫ベストテンに入ること必須です。

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Stooges New Orleans Brass Band / It's About Time

■96年結成のストリートブラスバンド、スーザホン/トロンボーンのWalter "Whoadie" RamsayとトランペットのAndrew"Drew"Bahamの2人を中心に10人編成。メンバーの中にはTroy "Trombone Shorty" Andrewsの名も見える。
■ストリートブラスバンドという表現はいわゆるマーチングバンドとは違う。HipHopと同じような雰囲気を多分に感じるからだ。マーチングバンドのような統制感はない、皆が好き放題に楽器を奏で、声をあげている癖にそれが自然と格好のいいアンサンブルを取っている。歌やラップや掛け声なんて演奏が盛り上がり、自然と声を上げたくなったから唄ってみた風だ。しかしそこがまたカッコいい。
■曲によってはP-FUNK風だったりHipHop丸出しだったりする。またブラスレゲエにも挑戦していたり、ちょっと他の若いブラバンには到達し得ない彼らだけの音を作り上げつつある。#14にBig Samのトロンボーンがブロウするのが聞こえる、最高に熱いマーチングソングだ。

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Smiley Lewis / I Hear You Knocking The Best Of

■13年ルイジアナ州生まれ、66年ニューオーリーンズで癌により死去したスマイリー、本名Overton Amos Lemons。実はニューオリンズ好きな私だがあまり70年代以前のR&Bは得意ではない。このアルバムも勉強程度の意味とDave EdmundsがカバーしたI Hear You Knockingの元曲を聴きたかっただけだったりする。
■しかし、ジャンプナンバーがナカナカよいではないか、唄い放つ感じの男らしさに好感が持てる。とても気持ちよさそうだ。録音は50〜56年のもののみ、ここが最盛期なのかな。ほとんどがDave bartholomewが関わっているようだ。ちょいと野卑なロックンロールの佳作がそろっている。どの曲もとても楽しいダンスナンバーばかりだ。

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Soul Rebels / No More Parades

■「街で屈指の不良ブラバン」と呼ばれたソウルレベルズ、98年のアルバム。ブラスバンドにラップが絡んでるという今ではよくある形なのだが、当時はまだ画期的だったのだろう。
■とにかく元気が良い、「ワルガキ」臭さがとても上手く表現されている。少なくともCoolboneの頭でっかちなブラバンラップよりは純粋に楽しめる。若者の体力で押し切ったビートも切れがよく、どの曲もかなりの満足感を見せてくれる。しかしこれって勢いだけの音楽でもあるのでコレ以降どのように成長しているかは不安が残る。

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Sansone Krown & Fohl

■NOの注目株3人が手を組んだステキな一枚。その力強いハーモニカでザディコ・ケイジャンとブルーズを融合させる"Jumpin'" Johnny Sansoneとオルガンコンボだけじゃなくピアニストとしても注目のJoe Krown、Joeのコンボでも名を連ねた弾き語りスティールギタリストJohn Fohl、3人のJが今後のアコースティク・ブルーズの方向性を示そうと力を入れたアルバムだ。
■#1、Fohlの力強い歌声とSansoneのブルーズハーブがなんとも印象的なブルーズ。#2はSansoneがギターとピアノをバックに気持ちよさそうに歌っている。#3はブギウギってことでKrownのピアノが映えている。そんな風に互いを引き立たせながら誰がリーダーというわけでもなくチームワーク&実力の見せ合いをしている。ジャケはなんだかJAZZのようなイメージを与えるが、中身は泥臭いアコースティックブルーズが詰まっている。
■20年代の素朴なブルーズやブギウギを心に描いて作ったのだろうが、そんな肌触りがしないのはやはり彼らが21世紀を担う音楽家だからだろうか? 回顧主義的なニューサウンドだ。

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Sam Rimington and the Barry 'Kid' Martyn Ragtime Band Alumni / Back To The Sixties

■ロンドン生まれのニューオリンズドラマー、バリー・マーティン率いるラグタイムバンドの同窓会アルバム、そのバリーマーティン自身は参加していないようだ。
■活動期の演奏を知らないのでなんともいえないが古き良きデキシーランドジャズとモダンジャズの中間というか両方のよさ(と悪さを)兼ね備えたような音。クラリネットとトランペットの絡みがなかなか気持ちいいライブアルバム。

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Shannon McNally & Neal Casal / Ran On Pure Lightning

■NY生まれ、ソルボンヌ大学への留学経験もあるという才色兼備なフォーキーシンガー、シャノン・マキナニー。そのしっとりとしかし芯の通ったサウンドは彼女の愛するエミルー・ハリスやニーナ・シモンの音を彷彿とさせます。また、ジャクソン・ブラウンを引き合いに出されることも多い内省的なSSW/ギタリスト、ニール・ケイサルは切なくも誠実な歌を聴かせてくれます。
■そんな二人が出会うべくして出逢った、この7曲、27分ちょっとのコラボレーションは互いの個性をぶつけ合うというのではなく、相手の才能を尊重してサポートしあった上での作品として考えてください。フォーキーで素朴な音とハーモニーは、その湿り具合から、ブリティッシュSSWの雰囲気をも感じ取れます。
■のびのびと唄うシャノンの横に流れるニールのアコギ、ニールのボーカルにそっとハモリを入れるシャノン、そんな二人のはかなく美しい共演を是非味わって欲しいものです。 (200403)

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Sister Gertrude Morgan / Let's Make a Record

■こわいほど素晴らしいCDに出会ってしまった。それがこのLet's Make a Recordだ。
■Presavation Hall Recordから今年(2004)発売されたこのCDは昔のものの再発らしいが、独りで唄50分弱の伴奏は唯一自分で叩くタンバリンだけ。その時間がまるでだれることも飽きさせることもない。ヴォーカルとタンバリンだけで思わず腰が動くほどの黒くて強いグルーヴを聞かせてくれる。無音の中から非常に濃いうねりが聞こえてくるのだ。そしてそれはWild Magnoliasを想起させるほどの力強いソウルの叫びを聴く者の心に叩きつけてくれる。
■ガートルード・モーガンは文字通りシスターである。ラファイエットのバプティスト教会で育った彼女は37歳の時にストリートの伝道師になり、南部を旅する。そしてニューオリンズで孤児院を設立するが、台風によって破壊されてしまう。その孤児院で子供たちに教科書代わりに絵を描いて教育していたのだが、家主の勧めもあり、新たな孤児院の資金に絵を売り始める。
■彼女の素朴な絵は次第に高い評価を得るようになり、NYのMuseum of American Folk ArtやワシントンでのTwentieth Century Black American Folk Art Showなどで紹介されることに。しかし借金を返し終わった78年、彼女は絵を描くのを辞め、その2年後に帰らぬ人となった。享年80歳。
■彼女の素朴で美しいイラストはアルバムジャケでも、多くの現代美術書でも目にすることが出来る。しかし、その音楽についての資料は全く手に入れることが出来なかった。でも僕らは彼女のソウルに触れることが出来る。この本当に素朴でピュアで、しかしグルーヴィでソウルフルな録音は、きっと多くの人の心と魂と肉体を揺さぶるだろう。この歌をアナタに是非聴いてほしい! (200404)

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Chief Smiley Ricks & The Indians Of The Nation / Feathercraft

■地響きのようなベースと低い雄叫びで始まるこのアルバムはマルディグラインディアンのグループらしさを踏襲するように、複合的なリズムを生み出すパーカッションと原始的なチャントを中心に呪術的な空間を作り出している。
■しかし、どこか違った感触。マグノリアスのような掛け合いから次第に盛り上がっていくというのとは違って、延々とクールにチャントが続いていく。それは一見単調のように感じるのだが、バックのジャジーだったりカリブだったりファンクだったりする伴奏によって飽きさせない。飽きることの出来ない単調さを続けられると一種のトランス状態を感じてしまう。妙な焦燥感に駆られてくる。
■あぁもしかして本物の呪術にはまったのだろうか? と疑う気も失せ、聞き込んでしまう。そこで#7〜8の一気に開放される瞬間が訪れる! あぁGod!! 一瞬そこに本当の神が見えた気がした。しかし気付くと#9の単調なチャントに戻っている。神がかり的な一枚、すごい。 (2004/01)

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Smilin' Myron / What About The People

■これはとても不思議なアルバムです。半分くらいは、ミーターズ真っ青の怒級ファンク、しかし2曲はラテン、そして2曲はスワンプというかカントリー調。とは言っても、どの曲もとてもブラスがいい感じです。Track7のブラスなんかたまらない。。。これぞニューオリンズファンクの醍醐味を感じます。
■ニューオリンズのいいところってのは白黒インディアンごちゃ混ぜ、ジャンル区別できない音、でもどれもファンキーでメロディアスでちょっと粋なかんじ。それがニューオリンズの音です。そういってしまうと、この分別不可能な音のスマイリン・マイロンはNOバンドらしいバンドといえます。
■このアルバムはマイナーレーべルからの発売で、日本では2年ほど入手困難だったらしいけど、P-VINE様が出してくれました。
■1枚目を出したところでリーダーが逝去してしまい、今後の行方が気になるバンドであります。

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Stanton Moore / Flyin' The Koop

■一作目やギャラクティックだけでムーアを判断しているとどうすればいいのか分からなくなってしまう2002年の問題作。
■いきなり畳み掛けるようなドラムと地の底から響くようなホーンが聴くものを不安に陥れる。そしてスケリックとカール・デンソンの二本のホーンが同調したり相反したりしつつ物語は進んでいく。そこに切り込んでくるムーアのドラムと他人事のように黙々と技を決めていくクリス・ウッド(from MMW)のベース。
■そう、まさにジャムっているのだ。どの曲も殺気立っている、とても酒を飲みながらしっとりという作品ではない。ムーアもセカンドラインなんて言っていられないくらい攻撃的だ。一枚全てが「スリリング」という文字で埋め尽くされている。

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Stanton Moore / All kooked out

■ムーアの98年のファーストソロ作品。随所に激しいジャムバンド的なセッションの片鱗を聴かせるものの、全体的にはジャズアルバムといったほうが分かりやすい。ジャズのセッション、そんな括りで語ることができる音だ。
■基本は彼のドラムとチャーリー・ハンターの8弦ギター、スケリックのサックスのトリオで聴かせる。
■音的には3人とゲストでギターのブライアン・シーガー、チューバのマット・ぺリーニらが各々競い合っているスリリングな場面が多いのにもかかわらず、ムーアのレイドバックするドラミングのおかげか、妙にしっとりした印象を受ける。
■深夜に酒を飲みながら一人で聴き込みたいような感じだ。一曲一曲の曲調で表情まで変化するドラミングだけに聞き惚れるのもよいかも。

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Sam & The Soul Machine / Po'k Bones & Rice

■Soul Machineはアートネヴィル&ネヴィルサウンズとミーターズの間の空白を埋めるファンクバンドだ。アートがミーターズを作るためネヴィルズを抜けた時、残されたアーロンとシリルがオルガンのSam Henryと手を組んで作ったバンドらしい。
■このアルバムは69年のコジモスタジオでの録音12曲に74年のレアトラックをあわせて全18曲。ネヴィル兄弟が参加している時期ではないが、69年分はZigaboo Modelisteのドラムが堪能できる。
■ミーターズばりのグルーヴィサウンドを聞くことが出来るが、彼らとの大きな違いはハモンドとサックスが中心に据えられているためかなりメロディアスなところか。どちらかというとGatursの方が似ているのかもしれない。メロウな雰囲気と絶妙なシンコペートが渾然一体となりいい雰囲気を出している。
■後半の74年録音分はボーカルが中心に。よりファンキーさを増す曲もあれば、ニューソウル寄りになってちょいヘナチョコな曲も。試行錯誤が伺える。 (200404)

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Shane Theriot / The Grease Factor

■ネヴィルブラザーズのギタリスト、シェイン・テリオットのソロセカンド。歪みを効果的に活かしたギターが51分間なり続けます。かなり攻撃的。普通こういうアルバムって半ばあたりでフュージョンになっちゃうんだけど、ず〜っと緊張感が続いています(その分聴いてても疲れちゃうけどね)。
■曲ごとにかなり雰囲気が変るのも素晴らしい。#4などはギターとスーザフォンとドラムのトリオ編成でのファンク。アコーディオンがうなる#10はさしずめヘヴィザディコか?(笑)。
■影響を受けたギタリストにエディ・ヴァン・ヘイレンの名が記されているのもNOファンクとしてはかなり異質かも。他にはジミヘンやモンゴメリー、ジャコ・パトリアスなど、色々なジャンルの弾きまくりたちの影響を受けているらしい。ファンクなのかロックなのか良くわからないがかなり良い。今年の収穫♪ (2004/02)

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